イスラムが求めるのは「神とともにある自由」 内藤正典・同志社大学教授に聞く(後編)
西欧とイスラム社会の関係、イスラム教徒の思いについて同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科長・教授の内藤正典氏に聞く、後編(前編は「西欧に対する『イスラムの怒り』とは?」)
広がるイスラム教への覚醒とフランスとの軋轢
――お話を伺っているとフランスはイスラム教徒が暮らしにくい国という印象ですが、イスラム教徒は500万人もいるということですね。
フランスの場合、移民イスラム教徒の出身地はチュニジア、アルジェリア、モロッコなどアフリカにおけるフランスの旧植民地が主。戦後、西欧が復興する過程で労働力不足が起きて、安い労働力を求めて、移民を受け入れた。
移民1世にとっては、生活が第一だから、イスラムを脇に置いた。貧しい中、イスラム教で禁止されているアルコール、麻薬、買春に走る移民も多数いた。
ところが、だんだんに生活が落ち着いてくると、拠り所を求めて、移民2世、3世の中で、1980年頃からイスラムへの回帰が始まった。
モスクへ通うようになった若者達は、そこで「癒やし」を見出し、素行不良が収まっていく。息子、娘がイスラムに覚醒して、道徳的な逸脱から脱したことを親たちはむしろ喜んだのである。
一方、フランス側はイスラム回帰の動きに対して、怒った。なぜ、フランス人にならないのか、なぜ、「啓蒙されないのか」と。フランス人の考えは、「遅れた連中を啓蒙してやっている」というもの。「21世紀にもなってなぜ宗教から離れられないのか」という。移民の支援団体の人でさえ、話をすると「彼らは遅れているから」と「遅れている」を何度も連発する。
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