イスラムが求めるのは「神とともにある自由」 内藤正典・同志社大学教授に聞く(後編)

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――しかし、今回の事件では、フランスは国を挙げて挑発者を擁護したわけですね。

だから、リスクは高まった。これからも事件は起きる。悲しいがこれが現実だ。フランスはテロの芽を摘むためには、自分たちも暴力に訴えざるを得ないと思っている。フランス人は隣の国すら受け入れていないライシテ、世俗化をユニバーサルな価値だと思っている。植民地支配についても「啓蒙してやった」としか思っていない。しかし、そういう姿勢でいる限り、テロの芽を摘むことはできないだろう。

イスラム国の台頭、危険な安倍政権の選択

――傲慢すぎるのではありませんか。20世紀、21世紀と西欧の論理では戦争の繰り返しから脱却できていない。

そうです。人権とか、民主主義とか、政教分離に尊い価値はありますが、それではなぜ、欧州は2度も大戦を繰り返して焦土と化したのだ、とイスラム教徒は言う。一方、イスラム側にも大きな問題がある。問題が起きたときに、「それは一部の過激主義者の問題でイスラムの問題ではない」と逃げる。しかし、欧米ではもう「容疑者はイスラム教徒」とされてしまう。

――イスラム法学者が解決を図れないのはなぜですか。

宗教指導者たちは、現存する国家に属しています。国家に逆らって物を言うことができなくなっている。イスラムの多くは西欧流の自由ではなくて、「神とともにある自由」を求めている。そうして、救いがないなかで、歪んだ形で台頭したのが、「イスラム国」。不安な彼らの心に、過激なリクルーターが入り込むのは容易なことだ。

――先生は、最新刊の著書で安倍政権の集団的自衛権行使を可能にする政策に異議を唱えていらっしゃいます。

安倍首相は集団的自衛権行使を可能にすることで、普通の国になると思っているが、世界は変わってしまっている。「国家対国家」の戦争の時代ではもうなくなり、「国家対テロ組織」の時代になっている。

現状からすると、米国が、いろんなところに手を出した結果、収拾に困ったところについて、日本に後方支援を求めてくる可能性が高い。米国が関与しているほとんどが中東、イスラム圏。残念ながら、日本では差別意識も低いかわりに、イスラムについて知識もない。

しかも、イスラムの人々は16億人、さらに数が増えていっていずれ20億人になる。敵に回すのではなく、ビジネスの相手とすべきです。

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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