なぜ日本では「産後離婚」が多いのか? フジテレビ「残念な夫。」に見る、危ない夫婦
でもこういうことって、今、育児中の親は知っているかもしれませんが、これから結婚する若い人たちや、子どもがいない人、あるいはすでに子育てが終わった人たちには、まだあまり知られていませんよね。僕だって、もし結婚前だったら関心を持たなかった話だと思うので。
だから、今、このテーマをドラマで扱うことには社会的な意義があると思っています。
制作メンバー周囲で集まる「あるある話」
――子どもの夜泣きに反応しない夫に妻がため息をつくとか、夫の出掛けに「行ってらっしゃい」を妻が言わなくなるとか、育児を経験した夫婦が「あるある!」とうなずくシーンがてんこ盛りです。かなりたくさんリサーチをされたのでしょうか?
もともと、いろいろ話には聞いていたのです。子どもが生まれたことを周りに報告すると、自然と情報が集まるんですよ。「(育児を)“手伝おうか”という言葉は、奥さんの前で絶対に言ったらダメだよ」とか、「これから妻はどんどん恐くなるよ」「僕は家の中で居場所がなくなったよ」とか(笑)。そういう話を普段からよく耳にしていたので、それがいちばんのリサーチになりましたね。
ドラマの企画が決まってからは、取材もしました。産後の離婚危機を経験した方を、お父さんとお母さんと別々に集めて話を聞かせてもらったり、育児雑誌の『ひよこクラブ』のモニター組織で「産後離婚」に関する読者アンケートを行って、夫婦の間でどんな不満があったかということを調べたりもしました。
それから、僕の同期なのですが、監督(演出)の西坂瑞城もちょうど2人目のお子さんが生まれたところでしたし、脚本の山崎宇子さんも育児を経験されているので、この辺りからもたくさんの「あるある」が出てきました。
――夫の陽一と妻の知里が、育児に関して考えることが懸け離れていて、そのギャップが面白いですね。たとえば、知里は陽一に、早く帰宅して子どもをお風呂に入れてくれることを望んでいるのに、陽一は贈り物で妻の機嫌を直そうとしたり。どうして、こういうズレが生じるのでしょう?
もともと女性のほうが精神年齢が高いということに加え、女性のほうが「親」という自覚が早く芽生えやすいというのもあるでしょうね。女性は、妊娠して子どもがお腹にいるときから母親になり始めるので、子どもが実際に生まれるときには、その自覚がほぼすっかり出来上がっている。
男にはそれ(妊娠)がないので、赤ちゃんが目の前に現れて初めて、「ああ、父親になるんだ」という自覚がようやく芽生え始めます。スタートラインからすでに、十月十日(とつきとおか)という差がついているんですね。
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