日本株がアメリカ株よりも底堅い「3つの理由」 ドル高円安だけではない株価の上昇要因とは?

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そして最後に中央銀行の政策スタンスも重要だろう。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)はインフレ退治が最優先課題となっており、株価の下落に配慮する余裕はない。

そしてマイナス金利導入の「盟友」であるユーロ圏は、7月ECB(欧州中央銀行)理事会における利上げが確定的な状況にある。5月23日にクリスティーヌ・ラガルド総裁はECBホームページ上に自身のブログを投稿。そこで「APP(資産購入プログラム)を通じた資産購入は7~9月の非常に早い段階で終わると考えている。これにより、フォワードガイダンスに沿って7月理事会で金利を引き上げることが可能になる。現在の見通しに基づくと、7~9月期末までにマイナス金利を脱却できる可能性が高い」として事実上利上げを宣言した。

現在プラス0.5%の中銀預金金利は、7月と9月の理事会における0.25%の利上げを経てゼロに浮上した後、金融市場の織り込みが実現するなら年末時点で0.6~0.7%近辺に到達する見込みだ。このように金融環境が緩和的でなくなりつつあるなか、欧州株は投資対象としての魅力が失われつつある。

世界同時引き締めで投資資金の逃避先は?

こうした世界同時引き締めをよそに、日銀は金融緩和を強化している。4月の金融政策決定会合で導入された常設指値オペ(10年物国債利回り0.25%で毎営業日買いオペ実施)は事実上の追加緩和であり、これは金融市場で度々浮上する緩和修正観測を徹底的に封じ込める意図が感じられた。こうした「封じ込め政策」は、世界同時インフレ、世界同時引き締めからの逃げ場を探すグローバル投資家にとって魅力的に映るだろう。

先行きの注目は、(1)自動車生産の回復と(2)インバウンドを含めた内需の回復――である。自動車生産の回復は緩慢であるが、年後半には半導体不足の解消に伴い増産が期待され、そうなれば幅広い業種に恩恵をもたらすだろう。

インバウンドについては経済的視点で言えば早期再開が望ましく日本の開国が重要なのは言うまでもないが、それと同じくらい重要なのは訪日観光客の多い中国、韓国、台湾の動向。これらで今後コロナ規制が一段と緩和されると、株式市場のムードは明るくなりそうだ。日経平均は、欧米株が停滞するなかでも2万8000円台を回復する可能性が高まってきた。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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