岸田首相が描く「健康危機管理庁」に必要な視点 コロナ危機の反省を新組織の設立にいかせるか

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1873年に創設された内務省は、当初は、産業行政・地方行政・土木行政・衛生行政・警察行政など、内政上の幅広い政策を担う官庁であった。しかし、1881年、産業行政は内務省から分離されて農商務省(その後の農林水産省と経済産業省)が新設される。つまり、約70年にわたる内務省の歴史は、主に地方行政・土木行政・衛生行政・警察行政の4分野にまたがっていると言える。

最終的には、1938年に衛生行政が分離されて厚生省が設置され、戦後の1947年にアメリカ軍に解体されて内務省は消滅。解体時に内務省が担当していた地方行政・土木行政・警察行政は、それぞれ分割され、現在の総務省、国土交通省、警察庁に連なっている。

国民保護を担う5つの省庁

内務省創設の発起人にして、初代内務卿(後に内務大臣)は、大久保利通である。明治維新の立役者である大久保は、「政府の任務は国民の保護にある」という考えの下、内務省を「国の国たるゆえんのもと」と位置付け、内政上の幅広い政策を推進した。

行政は経路依存的だ。したがって、過去に内務省が担当していた国民を保護する体制は、現在は旧内務省の後継官庁たる4省庁が分担管理している。ここに防衛省を加えた合計5省庁が、あらゆる危機から国民を保護する体制を構築し、緊急参集チームの主要メンバーを構成していると言える。

国民を保護する体制を確固たるものとするため、国家的な危機管理オペレーションを行うことのできる「実動組織」を有している政府機関とは、具体的には、以下の4つである。
① 警察庁
② 消防庁(総務省の外局)
③ 海上保安庁(国土交通省の外局)
④ 自衛隊(防衛省)

防衛省・自衛隊は、日本の平和と独立を守る実動組織でありつつ、各種災害に対する災害派遣を通じて国民を守っている。警察庁と海上保安庁は、それぞれ陸上と海上の治安を維持するとともに国民の生命・身体・財産を守っている。消防庁は、各種災害から国民を救助し、火災を消火し、救急搬送を担うことで、国民の生命・身体・財産を守っている。

次ページ手本となるのは消防庁
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