岸田首相が描く「健康危機管理庁」に必要な視点 コロナ危機の反省を新組織の設立にいかせるか
政府が6月に発表する感染症対策の抜本的強化策に、司令塔となる「健康危機管理庁(仮称)」創設を検討しているとの報道が出た。同庁の創設は、コロナ危機にあたって国全体の危機管理として指揮統制が利かず、一体的な危機管理活動ができなかったことの反省として、岸田首相が昨年9月の自民党総裁選で公約に掲げた重要政策である。
健康危機管理庁(仮称)は、医療・公衆衛生分野における危機管理の司令塔となる実動組織を作ろうという取り組みだ。これは、感染症に限らず、自然災害や、安全保障上の緊急事態においても、医療・公衆衛生分野で効果的に対処し、多くの国民の命を救うことをミッションとする政府機関のことだと考えられる。
ウクライナ戦争であらわになったこと
感染症以外の医療・公衆衛生分野の危機管理は、例えばウクライナ紛争に見ることができる。ウクライナ紛争をめぐる報道では、最前線の兵士と同様、最前線の病院でも戦いが行われているが、ここからもわかるように、安全保障上の緊急事態でも、医療・公衆衛生は国民保護のために重要な役割を果たす。自然災害については言わずもがなだ。
そもそも、「実動組織」というのはどういうものなのだろうか。
日本では、何らかの緊急事態が発生した際には、内閣危機管理監の号令で、官邸に「緊急参集チーム」が招集される。各省庁の局長級のメンバーで構成されるこのチームは、政府の事態対処の初動を担う重要な役目を負っている。
自然災害や人為災害、核・化学・生物テロ、安全保障上の事態など、さまざまな脅威に対して招集されるメンバーはそのつど異なるものの、内政上の危機が発生した際には、その大半の事態に対してメンバーは決まっている。旧内務省の後継官庁たる4省庁(①警察庁、②総務省(消防庁)、③国土交通省(海上保安庁)、④厚生労働省)に⑤防衛省を加えた合計5省庁である。
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