いじめを文集に書いた息子が学校に受けた仕打ち 親子で大丈夫と思えるためにすべきこと

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また、親の不安として「子どもの将来」がよく話題に上がりますが、将来なんて誰にもわかるはずがないんです。そのことをしっかりと自覚すると楽になります。

学校へ行っていたら安心でも大丈夫でもない。学校へ通うことをがんばるより、また将来を心配することよりも、「考える力」をつけること、これがとても大切です。私が思うに、学校で「覚える力」は身につくかもしれませんが「考える力」は身につかないな、と。今では、学校以外の学びや無料の学習教材もたくさんあります。ネットで情報収集もできます。親自身がまず情報を集めて安心するのがよいですよね。親が楽になれば、子どもも楽になっていくように思います。

――不登校の子を持つ親にできることはどのようなことだとお考えですか?

そもそも論として、親に心構えを説いたり、最初からあれこれ対応を要求するという関わり自体がダメ、というのが私の考えです。では、何をするか。親のがんばりをねぎらうことです。親はみな、自分なりにがんばっているんです。それを認めることから始めないと、親をもっとつらくさせるだけです。親はみな、もういっぱいいっぱいがんばっているんですから、そこからさらにあれこれ求めても、できないですよね。

私がとにかくつらかったとき、救われた言葉があります。絵本の読み聞かせグループに参加していたとき、つらい気持ちや不安を話したことがあるんです。そうしたら、まわりの仲間が「あんたの子どもやから、まちがいないやん。大丈夫」と言ってくれたのです。「どうしたらよい、こうしたらよい」などといっさい言わずに「あなたはあなたのままでちゃんとがんばってきたんでしょ、えらい!」と言われたことが本当に支えになりました。今思い出しても涙が出そうになるくらいです。

だから、私は親にはまず「しんどいよね、がんばってるね」と伝えることから始めます。そのうえで「こうしてみたらどう?」と具体的に提案します。それでうまくいかなければ「じゃあ、別の方法を考えてみよう」と言います。

「自分の子どもやから大丈夫!」と親自身が思えるようになることが大事です。たとえやり方がまちがっていたとしても、親はすでにがんばっているじゃないですか。「ちゃんとがんばっている私の子どもだから大丈夫」と思えたら、子どもも大丈夫と思えるようになると考えています。

――ありがとうございました。

(聞き手・小熊広宣、編集・麓加誉子)

【プロフィール】中尾安余(なかお・やすよ)
大阪府富田林市で活動する「結空間」代表。2人の子どもが不登校を経験。

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また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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