いじめを文集に書いた息子が学校に受けた仕打ち 親子で大丈夫と思えるためにすべきこと

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――お子さんの不登校について、ご家族の理解はいかがでしたか?

夫も祖父母も、子どもたちの不登校に理解を示してくれていたのですが、私の姉がたいへんでした。「行かさなあかん」と、学校復帰に関する書籍や新聞記事を送ってきたり、直接会えば「あんたがあかん」としか言わず、本当にまいりました。じつは、つらすぎるあまり、無意識に線路に立っていたこともあるんです。ぼうっと線路に立ち尽くす私を上から下までジロジロと見て通る人がいて、その視線でハッとわれに返り、事なきを得ましたが、一歩まちがえればどうなっていたか。

――それほどつらいなかで、いつどうやって考え方が変わったのでしょうか?

息子が中学3年生のとき、学校にスクールカウンセラーが来たんです。当時はスクールカウンセラーの制度が始まったばかりでしたが、私立の学校だったこともあってか、いち早く導入されたんです。そのスクールカウンセラーの対応に本当に助けられました。

その方は、私たち親をまったく責めることなく、親自身の思い込みや先入観などを自己解析できるようにしてくださり、私自身が厳しいしつけで育ったことでの影響など、新たに気づくこともたくさんありました。その後、勤務なさっている病院へ夫婦で通わせてもらって、息子が18歳になるまでお世話になりました。なお、息子は、いっさい病院には行っていません。

――中尾さんは不登校・ひきこもり・発達障害などの子どもやその親を支援する活動をされていますね。

息子も娘もひきこもっている状態だった2003年に「結空間」という団体を立ち上げました。不登校の個別相談から始まりましたが、発達障害や非行、ひきこもりとどんどん幅が広がり、持ち込まれた相談をいかに解決するか、に挑戦している感じです。困った人を見ると放っておけないんですよね。だんだん何をやっているのかわからなくなってきていますが、20年近く経った今でも走りまわっています(笑)。

信頼関係の実感が大切

――支援者としても活動されてきたこの20年をふりかえり、親の悩みなどの変化についてどう考えておられますか?

不登校でつらい思いをする親と子の苦しみの根本は変わっていないと思います。ネットを見ていても「どうしたら学校へ行くようになるか」と悩んでいる親がたくさんいます。ふつうに学校へ通った大人にとって、ふつうから外れることがつらいのだと思います。それもあってか、「がんばって学校へ行かせて・来させて」と必死になる親も学校もいまだに多いわけですが、これは子どもにとってマイナスでしかありません。それに、義務教育を子どもの義務だとかんちがいしている人もまだまだ多いですね。

また、長年、不登校に関わる活動をするなかで、継続的な信頼関係があること、無条件の愛情を子どもが実感できることがとても大切であると、私は考えています。私が相談に応じていたあるご家庭のお子さんはカメラとギターが趣味だったんです。それはその子の祖父と同じ趣味だったんですが、祖父が「不登校ならうちに来るな」と言ったそうで、子どもがひどく落ち込んでしまったんです。

そこで、祖父とお話した際にこう伝えたんです。「人との信頼関係が切れずに続いていくということがお孫さんのこれからにとって非常に大事なことです」って。その際、「おじいさんにお会いして安心しました。おじいさんのお孫さんですから大丈夫ですね」ということもあわせてお伝えすると理解してくれました。祖父との関係が復活すると、ほどなくその子は学校へ戻りました。

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