飼い犬・猫へのマイクロチップ装着「悩む」飼い主 6月1日から義務化スタート、普及や理解が課題
装着の最大のメリットは、保護されたとき身元証明が容易かつ確実で、飼い主と再会できる可能性が高くなることにあります。
「首輪やハーネスに迷子札や鑑札を付けているから大丈夫」という飼い主もいますが、首輪が外れてしまうと意味をなしません。また、自宅では首輪やハーネスを外していることが多く、突然の災害などには対応できません。盗難時には、保護されたとしても自分のペットだと証明するのは困難で、「似ているだけだ」と主張されたら、取り戻すことはできません。
しかし、マイクロチップを装着していれば、再会の可能性を高めることや自分が飼い主だと証明することができるのです。また、保護されて他の人に譲渡されたり、殺処分されたりするリスクも避けられます。そして、飼育放棄や遺棄など「安易にペットを捨ててしまうことを思いとどまらせる抑止効果がある」と期待されています。
デメリットは、体内(皮下)に埋め込む際に「通常の注射程度」の痛みがあることです。埋め込む際に使われる注射針が若干太いので、痛みが強いのではないかと考える飼い主も多いようです。
さらに気がかりなのは、装着による健康への影響でしょう。しかし、海外における膨大な装着実績では、現在まで装着後の副作用の報告はほとんどなく、また外部からの衝撃による破損の報告はありませんでした。健康被害でわかっているものは英国小動物獣医師会による報告で、370万頭以上のマイクロチップ装着実績のうち腫瘍が認められたのは2例でした。
マイクロチップの安全性は「高い水準である」と世界的に評価されています。装着による健康への影響は、心配のないレベルといえるでしょう。
飼い主はマイクロチップ装着をどう考える?
2021年12月28日~2022年1月12日、日本トレンドリサーチを運営する株式会社NEXER(ネクサー)が、全国男女計2000名を対象に「犬猫のマイクロチップ装着義務化に関するアンケート」を行いました。
「今年6月に犬猫へのマイクロチップの装着が義務化されることを知っているか」との質問に対し、76.3%の人が「知らない」と回答しました。マイクロチップを装着していないという飼い主に対し、「今後装着させたいと思うか」との質問をしたところ、55.9%の人が「装着させたくない」と回答しました。
この結果から、多くの飼い主が装着を否定的に捉えていることがわかります。その理由には「身体に異物を入れるなんて考えられない」という根強い抵抗感のほか、「健康に影響がないのか」「装着費用が高い」「手術は避けたい」「室内飼育なので必要ない」「必要性がまだ理解できていない」など、装着への健康不安や理解不足も多く見受けられました。
2022年4月25日~4月30日にペット保険の「PS保険」を提供する少額短期保険会社のペットメディカルサポート株式会社が契約者2461人(有効回答数379名:犬の飼い主254名、猫の飼い主125名)を対象に行った飼い主の意識・実態調査では、マイクロチップの認知度は9割以上、装着に賛成は8割以上という結果で、義務化について以前よりも浸透していました。
一方で、装着をしていない飼い主に装着予定を尋ねたところ、「悩んでいる」が半数、「予定なし」は犬の飼い主が5割、猫の飼い主は4割で、前述のアンケート結果から大きな変化は見られませんでした。
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