飼い犬・猫へのマイクロチップ装着「悩む」飼い主 6月1日から義務化スタート、普及や理解が課題
熊本地震で被災したペットや飼い主を支援していたPIACKの会(熊本動物取扱業専門委員会)が、のちに作成した『飼い主とペットの為の防災ガイドブック』にも、「災害時ペットが逃げ出したり、避難時にはぐれた時にいち早く探し出すことができます」と、マイクロチップ装着の重要性が明記されています。
筆者が熊本地震で被災した飼い主を取材した際には、「マイクロチップを装着していたので、すぐにわが家の子と再会できました」との声もいくつか耳にし、装着の有用性を感じていました。
マイクロチップ装着の義務化は、大規模災害時や、平常時の迷子や盗難、事故に遭ったときなどに、速やかに身元を証明することを目的としています。被災した飼い主の経験などから、「もしものときに役に立つ必需品」と位置づけられているのです。
また、社会問題でもある「飼育放棄」や「遺棄」などを未然に防ぐという効力も期待されています。
動物愛護先進国に追いつくためには、マイクロチップ装着は必須条件ともいわれています。そのような理由から義務化に至ったのです。
マイクロチップ装着の利点と欠点
マイクロチップは直径約2ミリ、長さ約8~12ミリ程度の円筒形の電子標識器具です。一度体内に埋め込んだら脱落する可能性は低く、電源なしで半永久的に使用可能です。国内では、国際規格(国際標準化機構)であるISO11784/5のチップに統一されています。
チップごとに15ケタの番号(識別番号)が記録されていて、専用のリーダー(読み取り機)で読み取ります。この番号は所有者情報などさまざまな情報が紐付けられ、環境省のデータベースに保存されます。照会することで、個体識別や所有者情報などがわかる仕組みです。
チップの埋め込みは、獣医師が行います。使い捨ての埋め込み器で装着します。埋め込み部位は背側頸部(首の後ろ)が一般的で、犬や猫が感じる痛みは注射と同じとされています。
費用は2500~5000円程度で、装着後に「マイクロチップ装着証明書」が発行されます。この証明書を添付のうえ、装着後30日以内に環境省のデータベースに登録します。申請方法には、パソコンやスマートフォンなどで行うオンライン申請(300円)と、専用用紙による郵送申請(1000円)があります。登録情報は、所有者が変わるたびに変更が必要となります。変更時にも同様の手数料がかかります。完了すると登録証明書が発行されます。
この指定登録機関への登録制度は、日本獣医師会が民間事業として行っているマイクロチップ登録制度(AIPO)や、その他の民間業者が行っているマイクロチップ登録制度とは異なります。そのため、すでにこうした事業者に登録したデータは、移行する必要があります。
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