「トラック運転手→火葬業」男性が見つけた"天職" いったいなぜ25歳でこの道へ進んだのだろうか

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火葬前の喪家への対応で、最も重視しているのは、「来場する喪家の気持ちを把握し、その気持ちと同じ温度で対応する」こと。その理由は、故人によって亡くなり方は違い、喪家の死の受け入れ方もまったく違うので、同じ対応では配慮が足らず、クレームにつながったり、良い思いを与えられなかったりするからだという。

つまりどういうことかというと、例えば、90歳のおばあちゃんで、「今夜が山です」と言われて、心の準備ができる状況で亡くなった喪家もいれば、16歳でバイクの事故で急に亡くなり、心の準備どころか、亡くなったことを認められない喪家もいるということだ。

喪家の気持ちに寄り添うために

喪家の気持ちに寄り添うために志賀さんはどのようなことを行ってきたのであろうか。五輪が火葬業務を受託している火葬場では、それぞれの業務マニュアルを作成。喪家の事例も掲載しているが、一般的な事例で、その事例に当てはまらないケースもたくさんあるという。

そのため、それぞれの気持ちをくめるようになるには、「どのような仕事でもそうだと思いますが、いろいろなご喪家を数多く担当し、こういう対応をしてあげたら喜んでもらえたなということを積み上げていくしかありません」と志賀さんは語る。そして、「ここが、火葬業務の一番大変で難しいところですが、逆にやりがいのある部分です」と付け加える。

このほか、火葬前の喪家への対応で重視しているのは、火葬場がどんなに忙しい時であっても、喪家が望んでいることを最優先に考えることだ。

「火葬場は、行政さんの施設ですから、必ずルールがあり、制限があります。しかし、喪家さんが望んでいることと、ルールを守ることの二者択一を迫られた場合には、私は、喪家さんの要望を優先し、次の仕事に影響するとしても、ルールぎりぎりのところまで対応するようにしています」

例えば、最後のお別れの時に、火葬炉に運ぶ時間になっても棺に張り付いて泣いている喪家がいる。そうした場合には、「時間ですから離れてください」とは絶対に言わない。

順番を待っている喪家がいるので、そこから見えないように、また、その喪家にも迷惑がかからないように、棺ごとパーテーションで囲って見えないようにして、お別れの時間を少し長くとってあげるようにしているという。このような対応をすることは多いそうだ。

「受入れ」業務の次の「火葬」でも、志賀さんがプロとして重視していることがある。日本には「収骨」という葬送文化があり、そのために「お骨をしっかり残す」ことだ。

「火葬炉の全自動化が進んでおり、収骨がなければ完全自動化も可能です。しかし、収骨するためにお骨をしっかり残さなければならず、そのためには温度管理をしなければなりません。温度管理するには、人の目や手が必要なのです」

棺の中には「副葬品」と呼ばれる故人が愛用していたものなどが入っている。棺は火葬炉前に運ばれてきた時には密閉されており、中に何が入っているかは確認できず、火葬するまで分からない。そのため、副葬品によっては、異常燃焼を起こして温度が急激に上がったり下がったりする。そこで、人の手による温度管理が必要なのだという。

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