「貧乏エリート」は円安が大チャンスだと思えない 財務省・学者・メディアの歪んだ「円高好き」

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例えば、(1)「世の中が大いに活性化して羽振りのいいビジネスマンや投資家が登場して自分たちも少し豊かになる状況」よりも、(2)「経済が停滞しても自分たちの相対的な社会的地位が脅かされず、むしろ向上するような状況」を好んでいるように思われる。

単純な経済合理性なら(1)がいいが、社会的な地位を高く保つには(2)がいい。彼らの行動原理は、たぶん経済学よりも、社会学的に解明したほうがいい性質のものだろう。

貧乏エリート自身やその配偶者などの「実感」としては、輸入物価の上昇やそれに輪をかける円安は「悪いに決まっている」と感じるのかもしれない。

しかし、たぶん「まるっきり愚か」ではない彼らの中の少なからぬ人々は、2013年にアベノミクスの大規模な金融緩和が本格的に始まったときには「三本の矢」(金融緩和、財政出動、成長戦略≒規制緩和)を支持したのではないか。しかし、今やそのロジックを忘れることにしたのだろう(ただし、アベノミクスは分配政策を欠いていた点に問題があった)。

では、交易条件が悪化して国民が貧困化して、欧米先進国がコロナ前を取り戻したにもかかわらずその手前で足踏みしている日本経済の状況を見て、「インフレよりもデフレがいい」「円安よりも円高がいい」「日銀は利上げして実質金利を引き上げるほうがいい」と思うのだろうか。

本気でそう思うなら、相当に重症の「貧乏病」ではなかろうか。

アメリカが円安を許している理由を考えよ

貧乏エリートさんたちの目には、「日銀が利上げして円安を解消すべきだ」としか見えていないのかもしれない。

しかし、理屈の上でも経験的にも、「実質的に50年ぶりとも言われる円安をどうしてアメリカが許容しているのか?」とまずは考えるべきではないか。為替レートの決定にあっては、日本政府の意向よりも、アメリカ政府の意向のほう方が圧倒的に重要だ。では、「日銀も利上げして、円安を是正しないとまずい」となぜ言わないのか。円安を許す理由は何か。

世界は、元々あった経済的な米中対立に加えて、ロシアのウクライナ侵攻が起こり、「アメリカとG7諸国などアメリカ寄りの国々」と「中露に親近感を持つBRICSなどの国々」の分断が起こっていて、アメリカは日本経済へのテコ入れの必要性を感じているのではないかと考えている。

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