「愚直さ」こそが真実を見極められる本当の理由 報道や発表に振り回されない「愚者」になれ

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しかし、今はそんな状態にあるわけではない。あくまでも形式的には、日本は第三国の立場のはずだ。アジア・アフリカの国はそうした第三国の立場から、今でもロシアと西側の情報を両方とも流し続けている。集団的自衛権の行使は、日米安保条約の話であり、NATO(北大西洋条約機構)との集団的自衛権に巻き込まれているわけではない。日本はNATOの加盟国ではないのだ。

とはいえ、事態は戦争状態にあるかのようである。これは由々しき問題である。しかし一方で、NATO加盟国のフランスでさえ、フランス・ソワール紙やシュッド・ラジオなど、政府の強硬なロシア対策に反対する放送も徐々に出ている。

報道の誇張や偏見から事件は起きた

今の状況を見ると、1990年代のユーゴスラビアの内戦のときのことが、ふと頭をよぎる。私は政府給費留学生として1981年にユーゴスラビアに留学していたために、この内戦には深く心が痛んだ。今のクロアチアにいたのだが、セルビアにも友人がいた。ユーゴの内戦では、西側の報道は一方的にセルビアを悪とし、スロベニア、クロアチアを善としていたように思える。しかし戦争というものは、どちらにも言い分があるものだ。

セルビアではつい先日、1999年にアメリカ軍が中国大使館を爆撃し、大使館員3人が亡くなった事件の追悼式が開かれていた。この中国大使館への攻撃も1995年に起こったとされる、スレブニッツァ(現在のボスニア・ヘルツェゴビナ)でのセルビア人によるイスラム教徒虐殺という非道な事件の前にすべてが正当化され、正義と人道のための必要な攻撃として西側では処理されてきた。

だが、この問題は西側の報道の多分の誇張や偏見から起こった問題でもあった。ジャーナリストのピーター・ブロックの『戦争報道メディアの大罪』(田辺希久子訳、ダイヤモンド社、2009年)は、この西側の報道体制について厳しく批判した書物である。彼によると西側の報道は最初からセルビアを悪者として報道していたというのだ。もちろんジャーナリストといえども両方の軍の取材はできない。一方的であるのはある意味致し方ない。しかし、なるべく相手の報道も参照して、報道すべきなのである。

大体こうした報道がなされるとき、決まって出てくるのは、大量虐殺や大量破壊兵器による殺戮、毒ガス兵器などである。本当にそうしたものが使用されたのかどうか、慎重に検証しなければならない。例えば、化学兵器など使用できそうにない国、ナイジェリアで化学兵器が使用されたという報道がなされたことがあるが、これは少し考えればわかる話である。ナイジェリアにその力があるのかどうかということだ。十分に考えずにそのまま信じてしまう。

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