「経済的弱者は自己責任」論争の知られてない本質 新自由主義者は「助ける必要ない」とは言ってない

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すべての負の現象を生み出している、悪の究極実態などない(写真:Luce/PIXTA)
弱者になるって、自己責任? なんでもかんでも全部、新自由主義が悪いのか?
人間誰しも、簡単に、答えを求めたいところ。だが、それではたしていいのか。
もはや「マジックワード」と化した、言葉と概念を、最近刊行されたばかりの『〈学問〉の取扱説明書』(改訂第二版)から、もう一度じっくり考えてみたい。
安易なレッテルに流されず、「考える」ことを放棄しないための基本レッスン。現代思想の紹介や丁寧なテクスト分析でも定評のある仲正昌樹氏が、大学4年生(♂)と博士課程に在籍する自称“高学歴ワーキングプア”(♀)の質問に答える問答形式で、学問の基本やそのツボを伝授します。
前回:格差を語る人なら絶対押さえたい「共感」の要点(5月9日配信)
前々回:格差を語る人に必ず知ってほしいマルクスの思想(4月22日配信)

自己責任論とニート・フリーター

♀:経済的弱者ってどうなってしまうのですか? 弱者は自己責任なんですかね……?

仲正昌樹(以下、仲正):そういう場合の「自己責任」って、どういう意味でしょうか?

「自己責任」というのは文字どおりに取れば、「自分のしたことに対して、自分で責任を取ること」を意味するはずですが、「弱者であることに対して責任を取れ」なんて言っている人いますか?

「新自由主義は、弱者に自己責任を押し付ける」という言い方をする人がいますが、政治家や財界人、経済学者で「弱者は自己責任だ」なんて言っている人を見たことありますか?  新自由主義批判の人が言っているほど、「自己責任」という言葉は、権力者や企業家の側からは使われていませんよ。

この言葉の使い方については、「『自己責任』って一体何なんだ?」(『諸君!』2009年1月号)という文章で論じたので、詳しくはそちらを見てほしいのですが、いわゆる新自由主義者たちが自己責任という言葉を使うのは主として、「自己責任で、市場での競争に参加すべきだ」という文脈においてです。

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