格差を語る人に必ず知ってほしいマルクスの思想 労働者搾取の限界によって資本主義は崩壊したか
格差問題と労働価値説
♀:なるほど。唯物論的な言い方に徹すると、じつはマルクス主義系サヨクの理想がものすごく元も子もないことになることだけはわかりました。サヨクの人たちも、究極の唯物論がどういうものになるのか、それほど突き詰めて考えていないんじゃないですかね。格差社会からかなりズレてきたので戻りたいんですが、「労働価値説」と格差って、マルクス主義の中ではどう繫がっているんですか?
仲正昌樹(以下、仲正):「労働価値説」が、労働者の肉体労働をとおしてのみ価値が生み出されることを主張する説だとすると、資本家が利益を得ようとすれば、やることは1つしかありません。労働者を搾取して、彼らが生み出した価値の一部をかすめ取ることです。では、利益率を上げようとすれば、どうしたらいいでしょうか?
♂:搾取率を上げる?
仲正:搾取率を上げようとすれば、労働時間を延ばすか、労働時間当たりの賃金を下げるしかない。多少は技術革新による生産性の向上も図るけれど、基本的に商品の価値はそれに投下された労働力によって決まるので、労働者に対する搾取を強化せざるをえません。そのせいで資本主義的生産力が増大すればするほど、労働者はますます困窮化していきます。
それと同時に、そうやって労働者を搾取して作った製品を市場で売り切らなければ、利益は上がりません。労働者は消費者でもあります。当然、労働者たちは搾取されて購買力が落ちているので、たくさん作っても、売れる量には限度があります。そうすると、たくさん作ってしまった製品を売るために、資本家同士で競争が起こります。競争して負けた資本家は資産をなくして、労働者に転落し、搾取の対象になります。
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