「経済的弱者は自己責任」論争の知られてない本質 新自由主義者は「助ける必要ない」とは言ってない

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その辺のおじさんやおばさんが、「ニートになるのは自業自得(=自己責任)だ」と漠然と言っているのが事実だとしても、それ、単に無関心なので適当に言っているだけなのか、新自由主義イデオロギーに洗脳されているせいなのか、あるいは、古い日本的な勤勉道徳を反映しているのか……。どうとでも解釈できます。

♀:では、ニートやフリーターが増えていることと、新自由主義はまったく関係ないんです
か?

断定してしまうのは飛躍

仲正:確かに新自由主義者と批判派から名指しされている人には、自己責任による市場への参入を推奨する傾向と、福祉予算などを削減して「小さな政府」にしていこうとする傾向とがありますので、その2つが合わさると、「市場での競争に負けた人たちを、セイフティネットもなしに、放り出してもいいのか?」という推論的反感が働くのかもしれません。そのように推測することが全くもって不当だとは言いません。

ですが、だからといって、現在、その新自由主義者たちが、「経済的に弱者になっている人たちは、自業自得なので放っておくべきだ」という考え方を持っていると断定してしまうのは飛躍でしょう。新自由主義者が他人の生き方に関心を持って、価値評価しているというのは不自然ですし、新自由主義者が口を揃えて、福祉は不要だと言っているわけでもない。はっきり言っているとしたら、ラディカルなリバタリアンの学者や思想家くらいです。

「小さい政府を良しとし、市場を重視する新自由主義的な発想を進めていくと、結果的に市場での競争に勝てない人にしわ寄せがいきすぎる。新自由主義路線を進めている人たちも、もう少し弱者の立場に立って考えるべきだ」という程度の控え目な主張なら、それほどおかしくないと思います。これと、「新自由主義者は、弱者を自己責任の論理で切り捨て、消耗品として使い捨てようとしている」という疎外論的な主張とは全然違いますよ。そこを混同している人が多すぎる。

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