NATO・欧米の分断を狙うプーチン大統領の戦略 ウクライナの先に西欧、アメリカを見据える

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もちろん、アコポフ氏のこの対西側戦争論がプーチン氏の意向を完全に反映したものか否かはわからない。アメリカやヨーロッパへの脅しに過ぎない可能性もある。しかし、2022年2月末の侵攻開始直後に軍事作戦が2日間程度で終わる計画であることを断定的に記述したアコポフ氏は、クレムリン内に有力な情報源を持っていると言われている。おまけにこの記事を配信したのが、ロシア通信(RIA)だということが気味が悪い。

RIAはタス通信と並ぶ代表的国営通信社だ。しかし、報道に徹するタスと違って、報道だけでなく、プーチン政権の政治的意向を伝えるクレムリンお抱え通信社だ。RIAが配信する論文はクレムリンからお墨付きが出ているとみられている。2022年4月にウクライナ国民に対する攻撃を是認する、狂信的民族主義者セルゲイツェフ氏の強烈な論文を配信したのもRIAだった。

NATOとの戦争に勝機はあるのか

仮にアコポフ氏が言うように、スバウキ回廊をロシアがベラルーシ経由で攻撃することになれば、NATO加盟国に対する攻撃となり、ウクライナ侵攻はロシアとNATOとの戦争に一気にエスカレーションする。アメリカのオースチン国防長官が議会証言で「ゲームチェンジャー」になるとロシアに強く警告した事態だ。もちろん、今後バルト侵攻があるとしても、ウクライナ東部での各戦線間で兵力のやり繰りを余儀なくされているロシア軍の現状ではまだ先の話だろうが、NATOは当然こうした事態に備えているだろう。

しかしプーチン政権が本当にNATO加盟国との長期的戦いを計画しているとしても、軍事的常識では勝利できるとは到底思えない。それでもロシアはどこに「勝機」があると見ているのか。この絡みで気になる表現がある。近年クレムリンが頻繁に使い始めた「アングロサクソン」という表現だ。「西側」がアメリカと西欧全体を指すのに対し、「アングロサクソン」はアメリカとイギリスに限定される。

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