フィンランド「NATO加盟」がもたらす新たな問題 ロシア封じ込め強化で加速する過熱のサイクル

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NATO加盟を決めたフィンランドのサンナ・マリン首相(写真:Valeria Mongelli/Bloomberg)

フィンランド、そして近くスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)加盟申請に動くのを受けて、アメリカのジョー・バイデン大統領と西側の同盟国はある賭に出ようとしている。

ロシアが過去3カ月で犯した戦略的ミスはあまりに大きく、今こそロシアのウラジーミル・プーチン大統領に大きな代償を支払わせるときだという見方が強まっているのだ。プーチン氏が支払う代償とは、NATOの拡大。同氏のもくろみとは正反対の結果がもたらされるというわけである。

だが、こうした決定には大きな問題がいくつもつきまとう。まず、ウクライナをなぜNATOに加盟させないのか、という疑問がある。ウクライナは腐敗まみれの欠陥国家ではあるが、現在の紛争の中心にあり、民主主義国として英雄的な行動を見せている。そうしたウクライナの安全保障に対し西側が決意を明確にできないのは、どうしてか。

さらに、NATO加盟国が32カ国に拡大し、ロシアと接する国境を何百マイルも延ばすことになる今回の西側軍事同盟の動きは、はたしてロシアの悪質かつ一方的な侵略を封じるのに役立つのか、といった疑問もある。それとも、孤立の中で怒りに震え、すでに西側の「包囲網」に対して被害妄想的になっている核武装敵国ロシアとの溝をより決定的にするだけなのか。

「ウクライナ排除」の厳しい現実

フィンランドの大統領と首相は12日、「遅滞なくNATOに加盟を申請しなくてはならない」と表明。ホワイトハウスはこれを歓迎した。スウェーデンの首脳も、近く同様の意思表明を行うとみられている。

これに対し、ロシアは予想どおり、「軍事技術的」対応を含む「報復措置」をとると述べた。フィンランド国境付近に戦術核兵器を配備するという脅しだと、多くの専門家は解釈している。

アメリカ政府関係者は数週間前からフィンランドとスウェーデンの政府関係者とひそかに会合を持ち、NATO加盟が決まるまでの間、両国の安全保障を強化する策を練っている。

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