フィンランド「NATO加盟」がもたらす新たな問題 ロシア封じ込め強化で加速する過熱のサイクル

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バイデン政権の中枢にとって、フィンランドとスウェーデンをNATOに受け入れる一方、ウクライナを加盟させない理由はわかりやすい。これら北欧の2カ国は模範的な民主主義国家であり、アメリカをはじめとするNATO加盟国はフィンランドとスウェーデンの近代的軍隊と定期的に合同演習を行ってきた。ロシアの潜水艦の追跡や海底通信ケーブルの保護、バルト海空域でのパトロールでも協力関係にある。

つまり、フィンランドとスウェーデンは正規の加盟国でないという点を除けば、あらゆる意味ですでにNATOの同盟国なのだ。

ウクライナが加盟国だった場合

これに対しウクライナは、プーチン氏が少なくとも部分的に再建を試みている旧ソビエト連邦の重要な構成要素だった。確かにウクライナは3年前の憲法改正でNATO加盟を国家目標としたものの、汚職の蔓延と民主的制度の欠落という問題を抱えているため、NATO加盟の条件を満たすには、数十年とは言わないまでも、数年はかかると考えられている。

フランスとドイツを中心とするNATOの主要加盟国はウクライナの加盟に反対する立場を明確にしているが、こうした立場はウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナが激しい戦闘の現場となったことで一段と強固なものになった。

ウクライナがNATOの正式な加盟国だったとすれば、アメリカを含む30の加盟国は、1つの加盟国への攻撃は全加盟国に対する攻撃と見なすというNATOの中核規定により、この戦争への直線参戦を余儀なくされる。

ゼレンスキー氏はこのような力学をよく理解しており、ロシアと戦争状態になってから数週間後にはNATO加盟へのこだわりを捨てた。ロシアの侵攻から1カ月後、外交的解決の可能性がまだいくらかは残っていると思われていた3月下旬に同氏は、交渉で戦争を終わらせることができるのならウクライナの「中立国化」を宣言する用意はある、と表明した。

ゼレンスキー氏は「我が国の安全保障、中立国化、非核保有について議論する準備はできている」とロシアのジャーナリストに語り、以来、このセリフを繰り返している。

こうした発言に、バイデン氏は安堵した。ウクライナからロシアを追い出して二度と侵略できないようするのがバイデン氏の第1の目標とはいえ、その第2の目標は第3次世界大戦を回避することにあるからだ。

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