フィンランド「NATO加盟」がもたらす新たな問題 ロシア封じ込め強化で加速する過熱のサイクル

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要するにバイデン氏は、プーチン氏の軍隊との直接衝突からは距離を置き、核戦争に発展しかねないエスカレーションを招く行為を全面的に回避しようとしている。仮にウクライナがNATOに加盟すれば、かつてソ連の一員であったこの国が西側と共謀してロシアを滅ぼそうとしているという考えにプーチン氏はますます凝り固まるはずで、そうなれば直接の衝突は時間の問題となり、あらゆる危険が生じるおそれがある。

「深呼吸して落ち着くべきだ」

今問われているのは、NATOの拡大が新たな冷戦、さらにはそれ以上に深刻な事態につながるのか、という問題だ。同様の議論は、クリントン政権時代にNATO拡大の危険性が懸念されたときにも持ち上がっている。第2次世界大戦後にソ連を孤立させる「封じ込め」戦略の立役者となったジョージ・F・ケナン氏は、NATOの拡大を「ポスト冷戦時代全体におけるアメリカの政策で最も致命的な過ち」と呼んだ。

シンクタンク「ニュー・アメリカ」のCEO(最高経営責任者)アン=マリー・スローター氏は5月上旬、「すべての関係者は深呼吸して落ち着くべきだ」と警鐘を鳴らした。

同氏はフィナンシャル・タイムズに寄稿したオピニオン記事で「ロシアがフィンランドやスウェーデンに侵攻する危険性は小さい」と述べ、次のように論じた。「それなのに、これら2カ国をNATOに受け入れれば、ヨーロッパには20世紀的な溝が生じて分断がいっそう深まり、21世紀に平和と繁栄をもたらす、より大胆で果敢な思考の妨げとなるだろう」。

もっとも、これは長期での懸念だ。短期的には、まだNATOに正式加盟していないフィンランドとスウェーデンに対しロシアの脅威をどう防いでいくかが、NATOとアメリカ当局にとっての懸念事項となっている(両国の加盟には現加盟国すべての賛成が必要なため、プーチン氏はハンガリーとその首相ビクトル・オルバン氏に圧力をかけ申請を拒否させるとみる向きは多い)。

この問題で立場を鮮明にしているのは、両国と独自に安全保障協定を結んだイギリスだけで、アメリカは両国の安全をどう保障していくのかについて考えを明らかにしていない。

ただ、そのアメリカも、NATO拡大は隣国を侵略したプーチン氏の自業自得だという非難の声は上げている。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(当時)は、ウクライナでの事態を受けて安全保障に対する考えを変えざるをえなくなったとしたフィンランドのサウリ・ニーニスト大統領の発言を大まかに引用し、プーチン氏について次のように語った。

「原因をつくり出したのはあなただ。鏡(に映った自分の姿)を見なくては」

(執筆:David E. Sanger記者)
(C)2022 The New York Times

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