グーグルは、なぜスペースXに出資するのか 30億人を直接つなぐ「衛星ネット構想」

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衛星ビジネスが最近注目されている原因は、そのコストが低下したことにある。かつての宇宙開発競争では、各国の政府がほとんど何もかも作る必要があった。それが今では半導体チップや電池など部品の数々を既成品として入手できる。集めていろいろ組み合わせてみることが可能だ。しかも携帯電話の内蔵カメラの機能がアップグレードのたびに向上するのと同じで、衛星画像の技術も進歩の速度が速い。

「もはや研究開発費は空軍やNASA(航空宇宙局)ではなくてグーグルやアップルその他、小型化エレクトロニクスの尖兵たる企業のもとにある」と、プラネット・ラブズの共同創設者CEOウィル・マーシャルは語った。

問われるミニ衛星の経済性

衛星経由でネット接続ということ自体は、全然新しいことではない。飛行機内で、海上で、または僻地でも利用されてきた。

カリフォルニア州カールスバッドの衛星会社バイアサット(ViaSat)は米国内70万世帯に衛星ネット接続を提供している。ただし高い軌道を飛ぶ大きめの衛星を利用する。つまり地球の自転と同じ周期でまわる静止衛星だ。

バイアサットのマーク・ダンクバーグCEOの推定では、世界各地で数十社がそういう高軌道衛星を使って地域限定の衛星ネット事業に携わっている。だが低い軌道をまわる衛星を使えば、世界中で未接続状態の30億人もつながる可能性があって魅力的だ。すでに低軌道衛星は画像技術の分野に革命をもたらした。刻々と変化する地上の様子が見えるから、たとえばショッピングモールの駐車場での車両の動きを観察できたりする。

ただ、未接続の人々のためにより安く提供できるかどうか、確認できるのはまだ先だとダンクバーグは言う。低軌道衛星の長所のひとつは、グーグルの検索画面でキーワードを入力してから結果が表示されるまでの時間が短縮されることだろう。とはいえ地球の表面には海や荒野が広がっているところが多い。人っ子一人いないような地域の上空で衛星がホバリングしているような図も多いはず、とダンクバーグは指摘した。「少数の大型衛星と、多数の小型衛星と、どちらのほうが安上がりか比較できるのはこれからだ」。

(執筆:Conor Dougherty 記者、翻訳:石川眞弓)

(c) 2015 New York Times News Service

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