「パートは無理」から変わった育休の「新しい制度」 「産後パパ育休」導入で父親の育休も一歩前進

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出生後8週間が過ぎ、ユミさんは育休に入りました。しかしユミさんも正社員として働いており、1年間休むことは、業務上はもちろん本人のキャリアにとっても避けたいと考えていました。そこで夫婦で話し合い、今回の改正で可能になった「育休の分割取得」を使うことにしました。

まずユミさんが4カ月間の育休を取得。4カ月目からユミさんは職場復帰し、代わりにケンジさんが3カ月の育休を取得して育児を担当します。ケンジさんは2カ月後に職場復帰しますが、そこからユミさんが2回目の育児休暇を5カ月取得しました。そして子どもが1歳になるタイミングで保育園に入園できたので、ユミさんも職場復帰をしました。

このように、今回の改正では育児休暇を夫婦ともに2回に分割して取得できるようになりました。夫婦で育休を交代して取得する、妻の職場復帰のタイミングで夫が育休をとる、職場の繁忙期を避けて育休をとるなど、柔軟に対応できるようになったのです。

厚生労働省「雇用均等基本調査(2020年度)」によると、育児休暇は、女性の9割近くは6カ月以上取得している一方、男性の8割は1カ月未満にとどまっています。さらに育休取得率は、女性が8割台で推移している一方で、男性は上昇傾向にあるものの12%台という低い水準にとどまっているのが現状です。

産後パパ育休の創設と育児休暇の分割取得が可能になり、これまで育休をあまりとることができなかった男性も、育休を積極的に取得できるような環境が整備されるのではないでしょうか。

企業の子育て支援の姿勢が問われる時代に

さて、働く女性が妊娠や出産によって職場で嫌がらせや不当な扱いを受ける「マタハラ(マタニティー・ハラスメント)」に加えて、近年では男性の育休取得などに対する「パタハラ(パタニティー・ハラスメント)」も急増しています。

今回の改正で、妊娠・出産の申し出をしたことや、産後パパ育休の申し出・取得、産後パパ育休期間中の就業を申し出・同意しなかったことなどを理由とする不利益な取り扱いも禁止されます。男性の育児休業取得が促進され、男性育休への理解が深まることで、パタハラも減少する方向になることを期待しています。

最後は、2023年4月1日に施行される改正についてです。

⑤育児休業取得状況の公表の義務化

これは、従業員数1000人超の企業に対して、育児休業などの取得状況を年1回公表することを義務づけるものです。仕事と育児の両立に対して企業がどのように取り組んでいるか、社会からしっかりと見られる時代が来るのです。

一連の改正によって、育児・介護と仕事の両立は実現しやすくなると考えられます。子育て世代が安心して出産し、子どもを育てていける環境をつくるためには、男性が育児休暇を取りやすい制度だけでなく、実際にその制度が気軽に利用できる職場づくりが必要です。

もちろん、職場における育児支援は、育児休暇を取っている間だけではなく、育休開けに職場に復帰した後も継続する必要があることは言うまでもありません。今回の育児・介護休業法改正を契機に、働きながら自分らしく子育てができるママやパパが増えていくことが期待されています。

三浦 絵美 社会保険労務士(OAG社会保険労務士法人)

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みうら えみ / Emi Miura

2016年、社会保険労務士登録。大学卒業後、一般事業会社に勤務。システム担当を経て、総務部にて人事労務職に就く。そこで、人事労務管理における課題の多さに直面し、企業の人事労務担当者の心の拠り所になりたいと考え、社会保険労務士を目指す。現在は中小企業の顧客をメインとし、相談しやすい社会保険労務士であることを心掛け、法人スタッフと一緒に、さまざまな課題解決に取り組む。リンク先:https://oag-sr.or.jp/

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