【産業天気図・自動車/自動車部品】生産ストップに追い込む鋼材不足や円の急騰など懸念材料膨らむ

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11月1日、中間決算の中でトヨタ自動車の役員は「とにかく市場がトヨタの車を求めてくれている」と言ってみせた。これは決して大げさな表現でない。足元は海外の販売が好調で、円高の影響も吸収し、2004年度の過去最高益更新は確実。05年度は営業利益2兆円という前人未踏の大台も射程圏だ。
 世界最大の米国自動車市場でGMやフォードが伸び悩む中、トヨタと日産自動車はこの11月単月で過去最高の売り上げ台数を記録する好調ぶり。一方のホンダは米国の看板商品であるアコードやシビックが伸び悩み、やや足踏み状態にある。ただ、他社よりもいち早く進出した中国市場では好調を持続。06年には現地生産能力を現状比8割増とする大胆計画を発表するなど、アジア圏の成長が大きな強みといえる。
 自動車メーカーの成長に連動し、トヨタ系のデンソーやアイシン精機、ホンダ系のショーワやケーヒン、日産系のカルソニックカンセイなど部品各社の業績上方修正や増配も相次ぐ。
 ただ、中位メーカーの状況は一様でない。経営再建に追われる三菱自動車は、北米と国内販売の減少に歯止めがかからず、会社計画よりも赤字が膨張する可能性がある。富士重工業でも強気の販売見通しが裏目に出て、第1四半期、中間期と、2度の販売台数下方修正を行った。逆にマツダは、アクセラなどの新型車が貢献し、増益基調は来期も継続すると見られる。
 『曇り』要因として年明け以降に懸念されるのが、車両生産の原料鋼材の不足。日産自動車は鋼材の手当がつかず、11月と12月に異例の国内工場一時休止(減産)を決めた。また、12月2日の新車発表会でゴーン社長が「生産が増える来年3月は最大で1万5000台の減産リスクがある」と明かした。生産担当の高橋忠生副社長も「11月、12月減産分の挽回は厳しい」と答えるなど、事態はかなり深刻だ。
 また、スズキでも鋼材の調達がつかず、12月に予定していた休日出勤による生産を見合わせている。多くのメーカーが来年も増産を見込んでいるが、先行きを危ぶむ声は少なくない。自動車メーカーとしての動向が『晴れ』でも、円の急騰や鋼材高、原油高など外部環境はすこしずつ雲ゆきが怪しくなっている。
【井下健悟記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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