日本国債格下げへの懸念--政府が発表する予定の計画と実行可能性について注視/ムーディーズの日本国債格付け責任者に聞く

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われわれが格付けにおいてネガティブなアクションをとった国は、アイルランドやギリシャ、ポルトガルなどいずれも経済規模が小さい。スペインについてはネガティブなアクションをとっているが、より大きな経済規模を持つ国であれば、金融危機があっても、吸収力はある。

--日本や米国では緊縮財政に踏み出すのがなかなか難しいという指摘があったが、一方で、英国が踏み出せているのはなぜだと考えているか。

ひとつ考えられるのは、歴史的な経緯だ。英国の場合、過去の政権も絶えず非常に強い決意を持って、国債の債券保有者を保護してきた。たとえば、第1次世界大戦の戦費が増えたときにも、デフレになり、失業者を出してまでも損をさせなかった。
 
 もう一つの理由としては、米国債はグローバルに見て、米ドル建ての準備高が多く、最も厚みのある市場であるし、日本の場合は国内での国債の消化率が高いという事情があるが、英国政府はそこまで英国債に自信を持てないということもあるかもしれない。
 
 それから地理的に見て、ユーロ圏に近いので、ユーロ危機の伝播の可能性も高いといえるかもしれない。

--日本においては、警報がなかなか鳴らず、急激に状況が悪化する、ある日突然、市場のマインドが変わる可能性があるのではないか。

それはテールリスクで、非常に確率的には低いと考えている。メインシナリオではない。

--日本政府はいずれ財政調整をやるであろう、ということか。

国際金融危機が始まるまでは、その途についていたと考えていた。現状では政府がやり遂げるという説得力を市場に対して持てるかどうか、予断を許さない。国債市場の金利動向を見ていると、今のところは、市場はゆくゆくは財政調整ができると考えているということだと思う。
 
 しかし、米国もそうだが、できると断言できる状況ではない。米国についてはAaaの格付けについて、格下げアクションをとるというところまで入っていないが、その可能性は高まっているということは言える。政局が難しいために、政府と議会との間に、社会保障給付を減らす、あるいは財政支出を削減するという妥協点を見いだす策が見つかっていないからだ。
(大崎 明子 =東洋経済オンライン)

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