日本国債格下げへの懸念--政府が発表する予定の計画と実行可能性について注視/ムーディーズの日本国債格付け責任者に聞く

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 07年には、国と地方を合わせた政府債務の対GDP比について、IMFの尺度で見れば、日本は少し下げることができていたので、決して日本が財政再建できないとは思っていない。ただ、当時は、経済が非常に浮揚していたということがあり、今とは状況が異なる。

日本だけではなく、米国においてもそうだが、財政再建に向けた合意を得るための政治的な利害調整は並大抵のことではできない。大幅な財政支出の削減や歳入を増やす、あるいはその両方の組み合わせを実現することは難しい。
 
 日米間では多くの共通点が見られる。団塊世代(ベビーブーマー)の高齢化により社会保障給付の増大が見込まれる。日本は米国よりも急速にその影響が出てくる。1995年に労働生産性の高い人口のピークを迎え、今では多額の納税をしてくれる人たちが少なくなっている。

■インタビュー

--経常収支が赤字になるのはいつになると考えられるか。日本において国債消化の盤石さが崩れ、急激な利払い費の上昇が起きるのはいつだと考えられるか。

まさに、それを見極めたいと考えているが、それがなかなか難しい。特に国際金融危機以降、政府の債務は縮減傾向から増加傾向に転じている。多くの市場参加者、アナリストがこの点に注目している。
 
 98年以降の10年間はむしろ、日本には多額の貯蓄があり、国債を消化できるという点が注目されていた。いま注目されているのは経常収支がいつ赤字になるのか。家計貯蓄がいつプラスマイナスゼロになるのかということだ。そのときに、投資家が円建て資産を嫌って海外の資産に乗り換えるかどうか、がポイントだ。

日本は政府債務残高の対GDP比が先進国中で最高であるにもかかわらず、国債に対する利払い費の対GDP比は先進国中で最も低いといういびつな形になっている。格付けアクションを起こすときには、長期的視点を織り込んでいる。
 
 おそらく、経常収支に関しては安全に見積もっても2~3年は赤字になることはないと考えている。市場関係者の間には10年は赤字になることはないという見方もあるが、それは賛否両論分かれるところだ。2~3年以降、10年以内にそうしたことが起きるという見方が多いようだ。

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