国際文化会館とAPIは統合で一体何を目指すのか 船橋API理事長と近藤・国際文化会館理事長に聞く

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船橋洋一(ふなばし・よういち)/1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱えるさまざまな問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある(撮影:尾形文繁)

その際、経済安全保障についても研究を深めたいと考えています。2020年4月、APIに地経学研究所を設立したのもそうした思いからです。ここでは、政府と企業をつなぐ形でともに研究したいと思います。国家安全保障は外交と軍事の世界で政府の仕事ですが、経済安全保障は企業が大きな役割を果たします。日本の企業も、この面でのシンクタンクの役割に期待していると感じます。

国際文化会館の2つの原型

――松本重治氏もシンクタンクを作ろうとなさっていたのでしょうか。

近藤:会館には2つの原型があります。1つはロックフェラー家が世界中で展開してきたインターナショナル・ハウスです。世界中の人たちが集まって生活を共にして対話する拠点です。一緒に過ごすことでいろいろなつながりが生まれ、相互理解が進みます。ニューヨークやパリのインターナショナル・ハウスは、世界の大学生・大学院生が中心です。

もう1つは、今でいうシンクタンクです。会館を設立する前に、松本重治は欧米を視察していますが、そのとき各地のインターナショナル・ハウスのほか、長い時間を割いてアメリカの外交問題評議会(CFR)とイギリスのチャタムハウスを訪問しています。ともに、シンクタンクの草分けです。

松本が目指したのはインターナショナルハウスとシンクタンクの融合体で、そのイノベーションの結晶として国際文化会館が日本に生まれました。国際文化会館は、館であり、コミュニティーであり、プログラムです。

インドのネルー首相は訪日した際、会館を訪れ、同じものがインドにも必要だということで、ロックフェラー3世に協力を要請し、後にデリーに「インド・インターナショナル・センター」を作っています。

――船橋さんが書かれた『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』には、このCFR Chatham Houseの双方とも世界最高レベルのシンクタンクとして紹介されています。この2つはどこがどう違うのでしょうか?

船橋:第1次世界大戦が終わり、ベルサイユでの講和条約はドイツに対する復讐戦の様相を呈し、アメリカが国際連盟加盟を批准できないという戦後の混沌の中で、この両者とも産声を上げました。世界の平和と安定と繁栄のためにどのような国際秩序とルールをつくったらよいか、政府とも対話しつつ、民間の独立した立場で、しかも、グローバルな視点を入れて、研究・提案し、有識者と意思決定者が知的対話をするそのような場をつくる、独立した主体による政策研究のconvening powerの登場です。スタディ・グループとかタスク・フォースという言い方でそのような政府をも巻き込んだ独立・中立の政策起業の力を市民社会が持ち始めたのです。

ロンドンとニューヨークという2つの国際金融の都で生まれたのも偶然ではありません。世界に投資する金融機関が世界安定のビジョンとデザインを求めていたということが背景にあると思います。2つのシンクタンクとも、2020年と2021年にそれぞれ100周年を迎えましたが、いまなお健在です。双方とも、これからは中国の挑戦とどう向き合っていくのか、その研究と知的対話に全力投球していくことになるでしょう。それは、われわれも同じことです。彼らをはじめとする世界の第一列のグローバル・シンクタンクとも連繋し、対話を深めていきたい。今回のわれわれの合併はそうしたことも視野に入れてのことです。

次ページ松本重治氏と船橋洋一氏、2人の創設者の縁
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