国際文化会館とAPIは統合で一体何を目指すのか 船橋API理事長と近藤・国際文化会館理事長に聞く

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国際文化会館の近藤正晃ジェームス理事長(左)と、APIの船橋洋一理事長(撮影:尾形文繁)
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戦後日本の民間国際交流を牽引してきた国際文化会館と、日本を代表する独立系シンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が今年7月に合併し、新たな歩みを始める。世界で活躍する日本の指導者の育成にも力を尽くしてきた国際交流団体と、政府の政策の検証と政策提言を担ってきたシンクタンクの合併の羅針盤はどこに針を向けているのか。国際文化会館の近藤正晃ジェームス理事長と、APIの船橋洋一理事長へのインタビュー後編をお届けする。

国際文化会館が果たしてきた役割

――前回(「国際文化会館とAPI『合併』で目指す新境地の展望」(5月10日配信)は国際文化会館(以下、会館)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)の合併の経緯や期待する相乗効果、さらには、これまでの両団体の歴史や成果について伺いました。その中で、会館の最も意義ある事業は会館の設立そのものだというお話がありましたが、今回はそのご発言を踏まえ、まず、会館がこれまで果たしてこられた役割について、もう少し詳しく教えてください。

近藤正晃ジェームス(以下、近藤):世界の課題を解決し、よりよい未来を創るためには、「知」が不可欠です。そこで、会館では設立当初から、世界に大きな影響力を与える知識人を招聘してきました。

国連の世界人権宣言を起草したエレノア・ルーズベルト、マンハッタン計画を主導した理論物理学者のオッペンハイマー、アメリカの冷戦政策を主導した政治学者のジョージ・ケナン、モダニズム建築を方向付けたヴァルター・グロピウスなど、世界を代表する各界リーダーを招聘し、単に講演するだけでなく、滞在していただいて、その間、日本の各界リーダーとも対話を繰り返しながら世界の未来を構想していくという活動を行ってきました。

グロピウスは80日も日本に滞在し、その間、丹下健三といった新進気鋭の若手建築家とポストモダンの建築について議論し、そこに集った日本の建築家らは、その後世界を代表する建築家に育っていきました。

もう1つの大きな事業は次世代リーダーの育成です。後にアジア人で初めて国連高等難民高等弁務官となる緒方貞子さんは、国際文化会館で博士論文を書きました。また、元国際協力機構(JICA)理事長の北岡伸一さんや、社会学者の上野千鶴子さんといった人たちの海外留学を支援したのも会館です。世界的に活躍する人材の山脈を形成してきたことも、会館の大きな仕事です。

さらに、国際文化会館という名称が示しているように、私たちは「文化」事業も重視してきました。今回のAPIとの合併にあたり、文化を重視する国際文化会館が、なぜシンクタンクと合併するのかというご質問を多く受けました。しかし、この2つを同時に行うことは、設立当初から極めて重視されてきました。会館の創設に多大な貢献をしたロックフェラー3世は、国際間で問題が一定以上に深刻になったとき、政治も経済も対話が困難になり、対話を繋ぐものは文化しかない。そして、文化は国境を超える力を持っていると洞察していました。

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