インフレ時代到来?「安物買い」を見直すべき理由 貴金属やブランド品の買い取り店も増加?

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なぜ人は高級品を欲しがるのか。消費の歴史や経済学書を読んでいると、西欧では貴族や上流階級の持ち物を真似したいという動機が、贅沢品の消費につながった面もあるとか。また、上流階級に近づくためにも必要だった。100円グッズばかり持つ暮らしをしていても、富裕層となかなか知り合えないのと同じ理屈だろう。贅沢品が買えるのだという財力の“見せびらかし”であり、豊かさを示す“記号” として買われたともいう。

しかし、日本がデフレに入る前のバブル景気では、もっと日本人らしい動機で売れていたような気がする。つまり、「みんなが買っていたから」だ。女性側の視点で言うと「みんながヴィトンのバッグをもっていたから」「みんながティファニーのアクセサリーをプレゼントしてもらうから」で、「みんながW浅野のヘアスタイルだったから」と、あまり変わらないのではなかったか。むろん、背景には給料が右肩上がりに増えるだろうとの楽観的な空気があったせいもあるが。

使用するモノと所有するモノとの消費が二極化

三十数年ぶりにインフレが到来して、再び「高級ブランド品が欲しい」という人が増えとしたら、当時とはやや違う理由ではないかと思う。それは将来を見据えての資産価値だ。

われわれはデフレ時代を生きてきたため、購入する製品の多くがギリギリまでコストを下げることを命題とされてきた。そこで買うものは、100均グッズやファストファッション同様、長持ちすることを前提とされていない。そういう消費に慣れてきたために、パソコンやスマホであっても短いサイクルで買い替える。しかし、インフレへ続く未来を考えると、使い捨ての短シーズン商品に資産的な価値はほとんどない。

今後モノの価値が上がってくるとしたら、使用目的の消耗品はひたすら安さにこだわり、保有し続けるものは一定のブランド価値がある高額品……という、消費の二極化が起きるのではないか。

とはいえ、給料が上がらないのに物価が上がるという今、贅沢品に手を出す余裕などないのだ。せいぜい、実家に帰った時に押し入れの不用品を親と一緒に整理し、高級品を発見したら、くれぐれも燃えないゴミに出してはいけないと説得し、くれるというならありがたくもらっておくくらいか。

個人的には、アクセサリーを買う時はせめて18金のものを選ぶ、新品は買えないがブランド質屋で手が届きそうな中古品を物色する……といった方法で、ささやかな資産防衛に取りくんでいる。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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