吉本興業「沖縄国際映画祭」14年目の大きな変化 人気芸人集めるスタイルから地元色強めた祭典に

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吉本興業が沖縄で事業展開しているのは、沖縄国際映画祭だけではない。沖縄が日本エンターテインメントの国内およびアジアへの発信拠点になることを掲げ、さまざまな投資を行っている。

2015年3月に直営劇場となる「よしもと沖縄花月」をオープンし、今年4月の閉館まで7年間営業を続けてきた。2018年4月には、ダンスや歌唱、漫才や演技などのパフォーマーおよび裏方のスタッフを育成するエンターテインメント総合専門学校「沖縄ラフ&ピース専門学校」を那覇の中心部に開校している。

また、アート分野でも、沖縄県本島北部地域(やんばる)を舞台とした現代アートや伝統工芸を体感できる地域芸術祭「やんばるアートフェスティバル」を2017年より毎年開催している。

NetflixやAmazonプライムなど外資の動画配信サービスに対抗する国産プラットフォーム設立を目指す、「沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム」構想を立ち上げ、2019年4月に東京と沖縄を拠点に日本コンテンツをアジアへ配信する「ラフ&ピース マザー」をローンチした。

地元との厚い信頼関係

なぜ吉本興業は沖縄に注力するのか。

沖縄国際映画祭実行委員長も務める吉本興業ホールディングスの大﨑洋会長は、「歴史的に見ても平和を願い、希求する気持ちを強くお持ちの沖縄の人たちのなかで芸能の役割は大きい。それは都会における芸能とは概念が大きく異なる気がします。

そういう沖縄でお笑いも含めたエンターテインメントの可能性を探り、地元の人たちと共有する。そこに新たな可能性のヒントがあります。なかなか安定した大きな産業が生まれにくい土地柄でもありますが、エンタメ産業が成功すれば、世界のどこにもない島になり、必然的に東京や国内各地域だけでなく、世界とも結びついていく。そんなふうになればいいと思っています」と語る。

大﨑会長は、沖縄特有のエンターテインメントを生み出す芸能風土や社会的および地理的要因におけるポテンシャルに着目し、沖縄を日本全国のみならずアジアまで視野に入れたエンタメ発信拠点とすることを目標に掲げる。

さらに、「沖縄国際映画祭は100回まで続ける」と公言しているように、沖縄にずっとよりそう姿勢を示していることが地元住民や自治体関係者に評価されており、それが大きな信頼関係を生み出している。

沖縄国際映画祭開催時に開かれたソーシャルビジネスコンテスト「島ラブ祭」の様子 (写真:吉本興業)

そして、沖縄発の新たな取り組みを始める。それが、地域ビジネス創出の“仕組み作り”となるプロジェクト「島ぜんぶでうむさんラブ」(島ラブ)だ。

これは、沖縄がソーシャルビジネス・アイランドになることを目標としたプロジェクトだ。地域の社会課題をビジネスにして解決するソーシャルビジネス創出を掲げるユヌス・ソーシャルビジネスの理念に基づて進められている。

2021年に3年間の事業プランを発表、起業および事業拡大を目指す人たちを募集し、今年1月より参加14チームによる事業化プログラムを開始した。資金の一部には休眠預金活用事業の助成金も活用している。

沖縄国際映画祭では、「島ラブ祭」というイベントが開催された。プロジェクト2年目に入った14チームの中間発表とそれぞれのアイデアの宣伝という位置付けで、4カ月にわたり練り上げてきた事業プランを5分間でプレゼンし、観客による投票で最優秀賞「島ぜんぶでうむさんラブ賞」を決定する内容だ。

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