吉本興業「沖縄国際映画祭」14年目の大きな変化 人気芸人集めるスタイルから地元色強めた祭典に

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そのオープニングには、ノーベル平和賞受賞者でソーシャルビジネス発案者のムハマド・ユヌス博士がVTRで登場、「発展途上国だけではなく日本のような豊かな先進国にも貧困はあり、それは避けなければならない問題。沖縄にも多くの課題があります。今回の取り組みでさまざまな貧困を解決できれば、社会や生活が大きく変わる。ソーシャルビジネスの島になることで沖縄県全体を変革していきましょう」と参加者へエールを送った。

これまでの取り組みと沖縄への想いを語る大﨑洋・吉本興業ホールディングス会長 (筆者撮影)

投票の結果、「自分一人ではたどり着けない明日に挑戦する」をテーマにするアシタネプロジェクトが最優秀賞を受賞した。これは引きこもりや不登校、障がい等を理由に生きづらさを抱えている子ども、若者の居場所を作るNPO法人ちゅらゆいの有志メンバーが集ったプロジェクトで、「また明日ね」と言える関係性を大切にするアシタネの輪を広げていく事業だ。

島ラブの代表を務める、よしもとラフ&ピース代表取締役社長の和泉かな氏は、「受賞チームを含めた全チームのアイデアが投資家や関係者に知られることで、実際のビジネスにつながっていくことを期待しています。3年間の事業で、2年目まで計画通り順調に進んできました。これからは14チームのビジネス化のケアと同時に、また次の3年への新しいソーシャルビジネスのタネも探していきます」と、さらなる事業推進へ力を込める。

表彰式に登壇した大﨑会長は「ビジネスコンテストとしては拙いプレゼンかもしれないけれど、しっかりと伝わるものがある。ただ、ビジネス化にはまだほど遠い。僕は経営者の端くれだが、ビジネスモデルだけがすべてではないと思うところもある。彼らの表現と一途さからなにかを汲み取って、一緒にできることをもっと考えていかないといけない」とさらなる後押しを約束した。

沖縄色を前面に

これまで築き上げてきたエンターテインメント発信の場と、地元との信頼関係をベースに、ソーシャルビジネスによる新たな地方創生の“仕組み作り”に挑戦する吉本興業。沖縄での関係性も新たなフェーズに入っているように見える。

映画祭のクロージングライブ「UTAGE〜宴〜」は、沖縄伝統芸能と歌、芝居、映像演出で沖縄の歴史を綴る壮大なエンターテインメントショーになっていた (写真:吉本興業)

それは、沖縄色がより濃くなっていることだ。映画祭での上映映画のラインナップおよびレッドカーペットゲストは地元が中心。最終日のエンディングライブは、沖縄の歴史と伝統芸能を紐解く物語が、生バンドの歌と芝居のパートに分かれ、さまざまな映像演出も加わって綴られていく壮大なエンターテインメントショーとなった。

従来の人気芸人を沖縄に集めて発信する“賑やかなお祭り”スタイルから、人も作品もローカルをメインに据えて沖縄発のエンターテインメントを発信する形にシフトしていた。

そんな吉本興業に対して、沖縄は全幅の信頼を寄せる。城間那覇市長は「本土復帰から50年を経たこれからの沖縄が日本中、世界中に発信される機会を得ることの意義は大きい。進化し熟成した沖縄のエンターテインメントを知ってほしい。来年も沖縄の魅力あふれるパワーを国内はもとより世界に発信されることを期待しています」とエールを送った。

沖縄国際映画祭は、地方創生という言葉が一般的ではなかった時代から結果的にそれを実践し、いまや吉本興業のSDGsや地方創生の取り組みの象徴のひとつになっている。ローカルを拠点にしたビジネス創出をひとつの事業の柱にする姿勢を明確に打ち出す吉本興業。その理念や取り組みは、包括連携協定を結ぶ沖縄の多くの自治体に受け入れられているだけなく、「次の50年」に向かう地元の熱い期待も集める。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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