日本輸出の台湾新幹線、「破綻」は必然だった 誕生と同時に動き出した"時限爆弾"

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先にも述べたが、台湾新幹線の運営が悪いかといえばそうではない。利息や税金を払う前の営業利益率は56%で、これは日本の新幹線や香港、シンガポールの地下鉄よりも高い数字だ。ところが、ここから利息や税金、償却費などを引くと、利益率はとたんにマイナスに落ち込む構造なのである。

加えて、切符代も安すぎる。台北から高雄までは約1600台湾ドルで、日本円にすれば6000円ほど。しかも早期購入のときの割引率が大きい。台湾と日本の物価差(だいたい半分ぐらい)を加味しても、もっと高くていいはずだ。だが、利用者の不満や減少を恐れ、最初に設定した「特別価格」の色彩のあった格安料金を上げられないでいる。

輸出の音頭を取ったJR東海にも影響?

いずれにせよ、台湾新幹線は運行上の問題を抱えていたというよりも、財務構造そのものに無理があったと言わざるを得ず、これは台湾新幹線が誕生した日からいずれ向き合わなければならない問題だったのである。

台湾新幹線は日本にとって初めての海外への新幹線輸出プロジェクトであり、音頭を取ったJR東海にとっても海外展開の中で必ず紹介される成功例となっている。今回の台湾新幹線の経営破綻騒動は日本の輸出と関係するものではないが、むろんいいイメージを与えるものでもない。

台湾ではいま、本当に台湾新幹線を破綻させ、政府移管にしていいのか、最終的な調整が行われている。馬英九政権がいかなる解決策を見いだせるのかが問われているが、昨年11月の統一地方選での大敗を喫した馬政権には、解決にかける意欲がそれほど感じられない。タイムリミットの3月までに妥協案が生まれるのか、破綻に突き進むのか、これから目が離せない。

野嶋 剛 ジャーナリスト

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のじま つよし / Tsuyoshi Nojima

1968年生まれ。上智大学新聞学科卒業後、朝日新聞社入社。シンガポール支局長、政治部、台北支局長などを経験し、2016年4月からフリーに。仕事や留学で暮らした中国、香港、台湾、東南アジアを含めた「大中華圏」(グレーターチャイナ)を自由自在に動き回り、書くことをライフワークにしている。著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮社)、『銀輪の巨人 GIANT』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『台湾とは何か』(ちくま書房)、『タイワニーズ  故郷喪失者の物語』(小学館)など。2019年4月から大東文化大学特任教授(メディア論)。

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