11月29日に投開票が行われた台湾の統一地方選は、馬英九総統率いる国民党が総崩れとも言える歴史的敗北となり、強い衝撃が広がった。「表の敗者」はもちろん国民党なのだが、国民党と長く蜜月を続けてきた中国政府が「裏の敗者」ではないかという問いが、否が応でも浮かんでくる。
今回の選挙結果を、習近平・総書記をはじめ、中国の指導者たちは暗い気持ちで受け止めたに違いない。あるいは、これまで丁寧に積み木を組むように築き上げてきた中台関係の土台が、一度の選挙でガラガラと崩れてしまったような徒労感に襲われたのだろうか。
「投票の動機は、単なる反中じゃない」
彼らが思い浮かべるフレーズは想像がつく。「だから民主主義(あるいは選挙)は恐ろしい」だろう。香港雨傘運動の引き金となった香港特別行政長官選挙に民主的な「普通選挙」を与えなかった自分たちの判断を、改めて「やはり我々は正しかった」と再確認し、胸をなで下ろしたかもしれない。
そんなことをあれやこれやと想像していた29日の深夜、台湾の政府機構で働く高官の女性から、私にこんなメールが送られてきた。
「外国の人たちは、これで台湾は反中になったなんて単純に思わないで欲しい。私たちの投票の主な動機は反中じゃないの。反馬(反馬英九)なのよ。でも、台湾に選挙があって本当に良かったとも思う。台湾の将来を決めるのに、人民が主役になれるということが証明されたわけだから。これこそが老共(中国共産党)がいちばん恐れていることなのよ」
確かに、彼女の言うとおりなのだ。
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