台湾に行って新幹線に乗るたびに、感心してきた。スケジュールは遅れない、車内もきれいにされている、お客さんも多い。日本の新幹線技術が台湾に定着したことをつくづく実感するのである。車内において携帯電話で堂々と話す人がいる以外は、日本の新幹線とまったく同じ風景だ。
また携帯電話については、これはマナーの善し悪しではなく、それを許容する文化の有無に尽きる。日本のように話すことが厳密によくないと認識される国は、アジアではむしろ少数派であるので、気にしても仕方がない。
台湾の交通環境を一変させたが……
この日本初の新幹線輸出の「成功例」と喧伝されている台湾新幹線が、いま経営危機に瀕しており、3月にも経営破綻し、政府による接収が不可避ではないかと言われている。乗客でいっぱいになった台湾新幹線の座席に腰を沈めても、この新幹線が破綻寸前であるという事態がどうしても素直に飲み込めない。いったい、何が台湾新幹線をダメにしたのだろうか。
台湾新幹線の運営会社は「台湾高鉄」という名称で、2007年に運行が始まった。システムは欧州、車両と技術は日本という変則の方法での輸出だった。最初は欧州のみの落札だったが、土壇場で日本が李登輝総統とのパイプを使って政治力でひっくり返したとされている。
首都台北と南部の主要都市・高雄との345キロメートルを1時間半で結び、従来4時間かかった移動を大幅に短縮した。台湾の交通環境、ライフスタイルは台湾新幹線の登場の前後で一変した、と言ってもいい。
順調であるかのように見える台湾新幹線だが、財務の悪化はかねて公知の事実だった。日常的には稼いでいるが、借金の返済に追いつかないのだ。
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