香港のデモ長期化、「一国二制度」の正念場

試される中国指導部の度量

17歳の学生リーダー、ジョシュア・ウォン氏。香港の将来への危機感は若者ほど強い

香港政府のトップである梁振英(りょう・しんえい)行政長官は「689」という異名を持っている。建設業界出身の梁氏は、中国共産党の地下党員だとうわさされる筋金入りの親北京派だ。2012年3月に長官選に勝利して現職に就いたが、このとき彼が獲得したのはわずか689票だった。

人口700万を数える香港の首長が、かくも少ない票数で選ばれている。その理不尽への怒りが、9月下旬からの抗議デモをかつてない大規模なものにさせた。

9割以上の香港市民は選出に関与できず

これは行政長官選挙が、独特の間接投票であることの帰結だ。投票できるのは、経済界や専門職の職能団体などを代表する選挙委員1200人のみ。彼らを選ぶ団体の構成員も25万人ほどしかおらず、香港の総人口から見れば3%余り。当局に有権者として登録されている350万人と比べても、極めて少数だ。

9割以上の香港市民は、自分たちの首長を選ぶことに関与できない。こうした制度になっているのは、北京政府の意に沿わない人物を香港のトップに据えさせないためだ。

英国の植民地だった香港が中国に返還されたのは、1997年のこと。このとき、向こう50年間は香港の資本主義経済や法体系を維持する「一国二制度」が採用された。

植民地時代は英国政府が総督を任命してきた。復帰後は行政のトップを普通選挙で選びたいという欲求は、香港社会に広く共有されていた。

これを受け、中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は、17年に行政長官選挙を普通選挙にすると07年に表明した。

香港の民主派は行政長官選挙への完全な普通選挙導入を最重要課題と位置づけており、13年初めから「オキュパイ・セントラル」という街頭行動を計画してきた。北京側が示す案に納得できない場合は、香港中心部のセントラル地区で1万人規模の座り込みを行うというものだ。

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