香港のデモ長期化、「一国二制度」の正念場 試される中国指導部の度量

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そして、今年8月31日に、全人代常務委員会によって選挙制度の改革案が公表された。確かに有権者による直接投票がうたわれていたが、肝心の候補者については、現在の選挙委員会が横滑りする指名委員会の過半数の承認が必要とされた。

しかもその数は2~3人とされているから、共産党が選んだ候補に対する信任投票に近い。

行政長官となる人物は「愛国、愛香港」が条件

これに先立つ6月10日、中国政府は香港統治に関する初の白書を公表した。その中には「香港の高度な自治権は固有のものではなく、その唯一の源は中央政府からの授権である」と明記された。また、「普通選挙で選出される行政長官の人選は、必ず国を愛し香港を愛する人物でなければならない」とも書かれていた。誰がその基準を満たすのか、その解釈権を共産党が持っていることは言うまでもない。

北京側の高圧的な態度に対し、香港の民主派は街頭行動で繰り返し抗議を表明してきた。「オキュパイ・セントラル」も10月1日の決行が決まったが、9月22日からは授業をボイコットした学生団体が座り込みを開始。28日には前倒しでの「オキュパイ」実施が宣言された。

その後のデモは、非暴力で北京の翻意を求める方針を徹底して整然と行われた。

ところが、そのデモ隊を解散させようと警官隊は催涙弾や唐辛子スプレーを使用。これにはノンポリ層も怒り、デモの規模が大きく膨らんだ。

返還後に大陸との経済一体化が進んだことは香港経済の成長を加速させた。一方で大陸からの不動産投機や観光客の激増は香港社会に大きなひずみを生んでいる。香港警察と背後にいる中国政府の強圧姿勢は、蓄積されてきた「反北京」の感情に火をつけた。

学生団体などは10月2日までに梁長官が辞任するよう要求。梁長官はこれを拒否したが、学生団体との対話には応じる構えを見せた。

3日夜からは「デモ反対派の市民」と称する集団の暴力行為が見られ、デモ隊との衝突が懸念される事態となった。その後、徐々にデモ参加者が減る中で、当局は警察による強制排除の可能性をちらつかせながら、早期の完全撤収を求めている。

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