現実としては、実質賃金が下がり続けているなかでは、消費税増税に伴う駆け込み消費がなかったとしたら、1~3月期はプラスどころか、マイナスになっていた可能性すらあるのではないでしょうか。地方に暮らす人々や中小企業に勤める人々は、この時期にはすでに、物価高によって生活が苦しくなっていることを実感していたからです。
私は地方に仕事にいくたびに、その地方の景況感をいろいろな立場の方々にお伺いしているのですが、すでに2013年後半には、大企業に勤める人々は「景気は少しずつ良くなっている」と喜んでいるのに対して、その他の多くの人々は「ぜんぜん景気は良くなっていない」とあきらめてしまっていたのです。
アベノミクスの失速を消費税増税にあると主張している人々は、そもそもとして、2013年、あるいは2013年度の1年間のGDPは、安倍政権が消費税増税を行う経済環境を整えるためにつくられた数字であるということを無視してしまっています。安倍政権は国民から増税に対する批判を受けないように、公共投資を大幅に増額したのですし、政権発足後の最初の2年間で、合計18兆円以上もの大型の補正予算を編成したのです。
もし、安倍政権が初めから消費税増税を行わないという決定をしていたのであれば、公共投資の大幅な増額はしなかったし、大型の補正予算を行う強い動機も持たなかったと考えるのが自然なのではないでしょうか。そのように考えると、たとえ当初から消費税増税を行わないと決めていたとしても、円安に伴う実質賃金の下落によって、2014年からの景気低迷は避けられなかったと考えることができるわけです。
民主党時代もひどかったが、実質賃金はプラスだった
マスメディアで、いい加減な情報が跋扈しているなかで、本当にアベノミクスが成功しているのか否かを見極めるためには、アベノミクスが本格的に始動した2013年以降の実質賃金と、それ以前の実質賃金の推移を比べるのが、いちばん正しい方法であると考えられます。
そこで、アベノミクスが始まる前の2010年~2012年の3年間、すなわち民主党政権時代の実質賃金はどうだったのかというと、2010年が1.3%増、2011年が0.1%増、2012年が0.7%減となり、結果的には実質賃金は0.6%増となっています。
正直言って、民主党政権時代の経済政策は目も当てられないほどひどかったのですが、それでも安倍政権下での2013年の実質賃金が0.5%減、2014年が2.7%減(1月~11月の数字)となり、暫定的ながら2年間の成果が3.1%減となっている(この減少率はリーマンショック直後に匹敵する)ことを考えると、アベノミクスがあまりにも筋が悪すぎる政策であったことが露見してしまったのです。
ただし、私は「安倍首相は本当に運がいい人だ」と思っています。
原油価格の急落は、アベノミクスによる景気低迷や国民生活の痛みを緩和してくれるだけでなく、アベノミクスの失敗から政権が退陣に追い込まれるリスクまでも軽減してくれるからです。この件については、また別の機会にでも話したいと思います。
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