2000連休を過ごした男に見えた生活リズムの真実 「規則正しい生活ができない」ことは本当にダメか

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この日を境に、睡眠リズムはふたたび乱れはじめた。日常的に運動して日光を浴びると、たしかに睡眠リズムは維持しやすくなる。しかし、何かのきっかけで頭脳にエネルギーが集中してしまうと、夜中に思考が暴走して眠れなくなる。それが自分自身に関わる衝撃的なこととも限らない。

思い返せば、以前から夜中に思考が暴走して寝付けなくなることがあった。朝に起きられないことではなく、夜に眠れなくなることが原因で、個人的な悩み事があるということでもなく、「頭脳が唐突に発火した」と表現したほうが近い。

徹夜してしまうと翌日の夜は眠れない。就寝時間が大幅に後ろにずれる。それに応じて翌日の起床時間も後ろにずれる。そうして生活の全体が後ろ倒しになる。運動をして日光を浴びれば多少は安定するが、唐突な頭脳の発火に押し倒されてしまう。何をきっかけに脳が発火して自動思考が暴走するかも分からない。それでも生活リズムを維持しようとすれば、ひたひたに入れた水をこぼさないように慎重に運ぶような気持ちになってくる。

同居人と暮らすようになり、成人後はじめて他人の生活を見た。同居人の生活リズムは安定している。平日はアラームを利用して目覚め、眠そうな顔をしつつも、決まった時間に出勤する。土日は会社がないから昼まで寝ている。

「平日に足りなかった睡眠を、ここでチャージするわけだよ」と言っていた。

金曜や土曜は夜更かししている。明日は会社がないのだと、興奮ぎみに飼いネコをなでまわしたり、ネットでネコの動画を閲覧したりしている。月曜になればまた会社に行く。週末に多少リズムが乱れても、月曜になれば元のリズムに戻る。生活リズムの基礎がしっかりしている。

それと比べると、自分はうまく規則正しい生活を維持することができない。頑張って3カ月もリズムを維持したのに、島田紳助の芸能界引退ですべてが吹っ飛んでおじゃんになる自分の身体が悲しくなってくる。自分は極端に生活リズムが乱れやすい。本当にだめな人間だ。厳密に管理しないといけない。

本当に「規則正しい生活ができなければダメ」なのか?

しばらく落ち込んでいたのだが、こうした思考そのものが自動的に出ていることに気がついた。切迫感を持って自責的に出てきている。しかし、この思考は本当に必要なんだろうか?

少なくとも現在、無理に規則正しい生活をする必要はないし、朝早く起きる必要はない。だいたい、女性宅の物置に住みついて大喜利の仕事で金を稼ぐというわけのわからない状況で、規則正しい生活ができないと悩むのは変な気もする。他に悩むべきことがいくらでもあるんじゃないのか。

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先日、もっと良い音で音楽を聴きたいと思いつき、スピーカーの位置を工夫して理想的なリスニング・ポイントを探った後、一畳半の物置に住んでいるかぎりスピーカーの適切な配置などありえないと気づいた。現状で規則正しい生活にこだわることも、これに似たアホらしさがある。大前提を見ないまま細部にこだわっても仕方がない。

学校というものに適応しようと頑張った時期のクセが残っていて、今では邪魔になっている気もする。自動思考を観察してみると、規則正しい生活を送ることができなければダメなのだと強く思い込んでおり、そして自分を責めている。学校というのは朝早くに起きて通い続けることを前提として要求しており、10代の頃、人間関係や勉強以前に、このルールを守るために非常な努力が必要だった記憶がある。規則正しい生活をしようと無理に頑張るのではなく、規則正しい生活を「課題」として引きずっている自分の心を見たほうがいいのではないか。

自動思考という言葉を知ったことは大きい。

(第3回「2000連休で自己啓発本を多読した男が悟った真実」(5月8日配信)に続く)

上田 啓太 ライター

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うえだ けいた / Keita Ueda

1984年生まれ。石川県出身。京都大学工学部卒。2010年、ブログ『真顔日記』開設。累計1000万PVを超す人気ブログに。オモコロ、ジモコロ、文春オンライン、cakes、GINZA等、多媒体で執筆。

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