ちょっと変わり者だという夫の武彦さん(仮名、35歳)への興味と愛情が伝わってくる文面である。「晩婚さんはノロケていい。むしろ周囲が安心するから」という本連載の隠れた方針を理解して読んでくれている武彦さんにも会ってみたいとも思った。
主導権は6歳下の雅美さんがしっかり握る
都心にある各駅停車駅の改札を出たところで待っていると、武彦さんと雅美さんは満面の笑みで迎えに来てくれた。昨年末に結婚したばかりの新婚さんだがすでに雰囲気が似ていると感じた。2人とも身長165センチ前後なので、並んでいると仲良しきょうだいのような印象を受ける。駅から徒歩10分弱。新居にお邪魔して、夫婦それぞれの手料理と缶ビールをごちそうになりながらお話を伺った。
「大家さんのご自宅の奥にうちのアパートがあるので、初めての人は地図ではたどり着けません。間取りは6畳と4畳半の2Kです。家賃ですか? 7万5000円です。都心ではこれでも破格の安さだと思います。武彦さんは、駅から遠くても家賃が高くてもいいのでもっと広くてキレイな部屋に住みたいと言うので大げんかになりました。私は暗い道を長時間歩いて通勤するのは嫌です。最終的には『私と住めるんだからどこでもいいでしょ!』と説得しました」
雅美さんの実家は埼玉県にあり、2人が住む町には「電車1本」でつながっている。「いずれ子どもができたときに母が手伝いに来てくれやすい」との思惑も雅美さんにはある。結婚して同居したことでそれぞれの勤務先からの家賃補助も減り、家計は切り詰めなければならない。この家の主導権は6歳下の雅美さんがしっかり握っているようだ。
「僕も結果的にはこの家でよかったと思っています。家賃は振り込みではなく大家さんに手渡しすることになっていて、そのたびにアイスや手作りの燻製をくれたりするんです。どうでもいいことにはこだわらなくてもいいんですね」
鷹揚に語る武彦さんだが、結婚式の準備などでも「そんなことはやりたくない」と不貞腐れることが多かったと雅美さんは指摘する。筆者との会話でも1つの話がやたらに長くて、こちらが合の手を入れると「いや、そうじゃなくて」と訂正して、またたくさん話す武彦さん。我が強いというよりも「自分のことを正確に伝えたい、間違えたくない」という気持ちが強いのだと感じた。細かいことも気になってしまうのだろう。
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