電力危機に陥る日本「原発再稼働」の議論が必要だ このままでは今年冬に大規模な停電のリスク

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わが国は二度と深刻な原発事故を繰り返すことは許されない。当時の実情を最もよく知る者の一人としてその決意は生涯変わることはない。東電福島第一原発では現場の命がけの作業によって被曝による犠牲者を出すことを免れたが、避難者の中に多くの震災関連死を発生させてしまった。この反省は石に刻まねばならない。

しかし、電力供給が生命線となる医療現場、灼熱の夏のクーラー、極寒の中での暖房などを考えると、電力の供給途絶も命に直結することもまた事実であり、エネルギーの安定供給を考えた時に原発の必要性を考えなければならない時が来ている。

国民生活を守るために、政府は原子力規制委員会に対して「特重のバックフィットの適用時期を見直すことで地震や津波対策を終えた原発の再稼働を認めることを検討するべき」との意見を出すことを提案したい。

原子力規制員会と原発事業者が学びあう関係を

原発事業者への規制が十分でなかった原子力安全・保安院の反省に立ち、原子力規制委員会は事業者と明確に一線を引いてきた。田中俊一初代委員長、更田現委員長をはじめとした委員の皆さん、そして原発事故後に火中の栗を拾い原子力規制という困難な分野に身を投じてくれた原子力規制庁のスタッフの皆さんのこれまでの努力には敬意を表したい。原発事故後、原子力規制の信頼を取り戻すためにこうしたスタンスが必要不可欠だったと思う。

自民党の原子力規制特別委員会でアメリカ原子力規制委員会の元委員長のリチャードA.メザーブ氏から話を聞く機会があった。メザーブ氏は原発事故後に私自身がアメリカで面談した最も信頼できる原子力規制の専門家で、日本の原子力規制委員会の国際アドバイザーを務めていただいた。彼の発言で私が最も印象に残ったのは「規制当局と原発事業者が学びあうことが大切だ」というところだった。

これまでの原子力規制委員会と事業者は、いわば取り締まる側と取り締まられる側という関係を築いてきたため、両者の間に非公式なコミュニケーションの場は存在していない。私から追加で質問を送ったところメザーブ氏はアメリカのNRCにおいては「被許認可者(原発事業者)が非公式の話し合いのためにNRC委員のオフィスで会う立ち寄り訪問は、委員の役に立っている」との回答を得た。

発足から10年を経て、原発の真の安全を確保するために原子力規制委員会自身も変わるべき時が来ている。

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