「35歳転職限界説」がもはや過去の遺物となった訳 40~50代の転職者がこの10年で激増している背景

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「かつて企業は、終身雇用、職能制、年功序列、総合職、ジョブローテーション、といった文化の中で、就職氷河期明けの人手不足を若手、特に第二新卒で埋めていました。それが2013年以降の景気拡大によって、人材不足を35歳未満の人材で充足させることが難しくなっていたということと、合わせてジョブポスト制の浸透だったり、終身雇用の価値観が崩れたりしたことによって、即戦力採用がより進みました。そして働く価値観の変化がそこに加わって、40代以上の転職が増えてきたのではないかと思います」

65歳がロボティクス系ベンチャーへ転職した例も

そして、こんな最近の転職事例を教えてくれた。

それは、製造工程での開発設計の経験が豊富な65歳の人材が、20代社長が率いるロボティクス系のベンチャーに転職をしたという事例。量産化する仕組みの構築は、なるほど20代、30代では難しいはずだ。

「コト軸で考えたときには、経験豊富なシニアを採ったほうがちゃんと事業が進む、ということを理解してもらえた事例かな、と思います。量産といっても、そこに発注するのが最善なのか、ちゃんとそれでモノが作れるのかとか、品質は大丈夫なのかとか、分解するといくつもスキルセットを持っていないといけないので、当然、経験年数も積んでいる必要がある。この人材の場合、入社3カ月後には5000万円のコストカットを実現したそうです」

これは、相当にスキルフルであるからこそ迎え入れられた事例なのかもしれない。しかし、そこまでいかなくとも、40代、50代の転職数の増加を見ると、経験に裏付けられた知見やスキルを求める向きは多い、と推測できる。

筆者は転職についてニュートラルな立場であるが、以前のマーケットの常識は崩れ、仕事選びの選択肢は広がっている、と言えるのではないだろうか。

間杉 俊彦 フリーライター

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ますぎ としひこ / Toshihiko Masugi

1961年東京生まれ。1986年ダイヤモンド社に入社、週刊ダイヤモンド編集部に配属。記者として流通、家電、化学・医薬、運輸・サービスなどの業界を担当。2000年に同誌副編集長。2006年より同社人材開発編集部副部長として研修教材や人材育成に関する書籍の編集を担当。2019年3月に退職し、現在フリーライターとして活動。編集を担当した主な書籍に『組織開発の探究』(中原淳、中村和彦著、ダイヤモンド社)、『ヤフーの1on1』(本間浩輔著、ダイヤモンド社)。ライティングを担当した書籍に『プロフェッショナル広報の仕事術』(高場正能著、日本経済新聞出版)などがある。

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