「脂肪肝は酒飲みだけがなる病気」は重大な誤解だ 糖質を摂りすぎると、肝臓に重大なダメージが
これは肝移植を受ける患者にとって、生死を分ける大きな問題です。患者の余命は、概ね6カ月以内のことが多く、仮に1年後にドナーの脂肪肝が治っても遅すぎるのです。
そこで、生体肝移植に携わる世界中の医師、研究者が“ドナー候補の脂肪肝を短期間で確実に改善させる方法”を研究。その結果たどり着いたのが、「食事の改善」でした。薬ではなく、食事で肝臓から脂肪を落とすことこそ、王道なのです。
パリ大学付属の肝臓移植センターに臨床留学したのち、2009年から日本赤十字社医療センター(東京)で生体肝移植チーフとなった私は、肝臓病学、栄養学の文献を読み漁り、さまざまな学びを得ながら、ドナー候補の脂肪肝指導を実施。肝臓の組織を採取し、顕微鏡で見ては食事指導の効果を確認する日々を送りました。
そして、「脂肪肝は適切な食事をすれば、わずか3カ月で改善する」と確信を持つに至りました。実際、私が指導したドナー候補の脂肪肝改善の成功率は100%でした。
ゆるやかな糖質制限が脂肪肝を救う
その後、2016年に佐久市立国保浅間総合病院(長野県)に赴任した私は、生体肝移植ドナーの脂肪肝治療で培ったノウハウを、一般病院の脂肪肝患者の皆さんにも届けたいと考えるようになりました。
脂肪肝は、糖尿病や脳血管障害などの生活習慣病の始まりでもあり、脂肪肝を改善する食事はこれらの予防にもなります。そこで、糖尿病専門医の西森栄太氏と、脂肪肝改善の効率的な食事法の臨床研究を実施。
体重や活動量に応じて摂取カロリーを厳格に守らせる「カロリー制限」と、体格等考慮の必要がなく、糖質量のみを制限する(1日のトータル糖質量130g以下)、「糖質制限」による脂肪肝改善効果の両方を研究しました。
すると結果は「カロリー制限食」も「糖質制限食」も、いずれも脂肪肝の改善に役立つことがわりました。同等の効果があるのならば、患者がより実践しやすい糖質制限を採用することにしました。
糖質制限食と一口に言っても減らす糖質量によってレベルがありますが、清涼飲料水や乳酸菌飲料などの加糖飲料は一切やめ、主食を半分にします。1食当たり糖質量40gまでの、いわゆる“ゆるやかな糖質制限”です。
主食を完全になくすような極端な糖質制限を続けると、リバウンドの可能性が高まります。そこで、スーパーマーケットで買える食材でできて、続けやすく安全な糖質制限の方法を目指しました。
研究のために特別に行った外来は「短期間で痩せることができて、元気になる」と評判になり、研究終了後も継続を望む声が寄せられました。
そして2017年、満を持して立ち上げたのが、肥満・脂肪肝の専門外来である「スマート外来」です。メソッドの根幹は“肝臓をいたわる”こと。具体的には、①糖質や加工食品を減らすこと、②加糖飲料をやめること、③野菜を増やすことなど。
特別な薬や特殊な健康食品も必要ありません。これらを実践すれば、おのずと痩せていきます。そして肝機能が改善すれば、疲れにくくなり、免疫力も上がります。
スマート外来の患者の大半は、これまでダイエットの失敗をくり返してきた方々。減量がうまくいかない方も確かにいます。しかし、うまくいかないのは“医療者側の責任”と考え、医師、看護師、栄養士が協力しあい、患者一人ひとりの生活環境や心の問題に寄り添いながら指導を続け、外来患者の8割以上が3カ月で5kg減、脂肪肝の改善を成功させています。
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