プロに聞いた「お父さん」の受験への関わり方 品川女子学院の理事長が語る「今の子育て」

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――経済格差が学力格差につながるという調査結果が出ていますが、コロナ禍で家計が落ち込み、教育に掛けるお金が減っている家庭も増えているといいます。この危機を乗り切る教育方法はあるのでしょうか?

漆先生:お茶の水女子大学の「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究※」によると、家庭環境と子どもの学力についてこのような結果が出されています。

子どもの学力と家庭の収入・親の学歴には相関があるが、不利な環境を克服し、高い学力を達成している児童生徒が一定数いる。そうした家庭では、規則的な生活習慣を整える、文字に親しむように促す、知的な好奇心を高めるような働きかけをしている。

数字で認知できない力=非認知スキルと家庭の社会経済的背景には相関がなく、学力とは弱い相関があるので、非認知スキルを高めることによって学力を上げる可能性もある。

「よそと比べてうちにはこれが足りない」と言っても、同じ条件で育てられる子どもは世の中にひとりもいません。上の結果からわかるように、その条件の中で何をどう生かしていくかが大切です。負い目を感じほかの家庭とつい比べてしまう……といったことをしないのが大事です。

わが校では、経済的に家計が急変したり親御さんが亡くなられた場合、奨学金を出したり、授業料を免除をしたりする制度があります。その面接は、親子でおこないます。なぜ子どもも一緒かというと、中高生ともなれば家族の一員として、家庭の状況を知って自分の役割を果たすことが成長につながると考えるからです。それにより、家族が大変なときだからこそ親を手伝おう、学校生活ではこれをやろうとモチベーションが上がる子もいます。

奨学金を希望した子どものほうが合格率が高かった例も

私は、校内外、これまでいくつかの奨学金に関わってきたのですが、こんなこともありました。ひとりで子育てをして苦労しているお母さんがいらして、経済的に困難な状況になっても学費に関してはどこの支援も受けようとなさらなかったんです。ですが、途中でどうしても苦しい状況に陥り、奨学金制度を活用されました。

お母さんは、「自分は学歴がなく苦労したから、子どもには勉強をさせてあげたい」と考え、家計を学費最優先で回していたそうです。そして、それが自分にとっての働く意義になっているからほかからの支援は受けないできたとおっしゃいました。その意図を知ったお子さんは「お母さんが頑張っているから私も頑張る」と言い、お母さんは「娘が頑張るから私も頑張る」とおっしゃっていました。

実際、ある予約制の奨学金(受験前に予約でき、志望大学に入学が決まった時点で援助が始まる制度)に関わっていたとき、(奨学金を希望せず)一般受験で受験するお子さんと、この予約制奨学金制度を希望して受験するお子さんとでは、同レベルの成績だったとしても後者のほうが合格率が高いので、驚いたことがあります。

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