プロに聞いた「お父さん」の受験への関わり方 品川女子学院の理事長が語る「今の子育て」
一方、本校のような私立学校の生徒の中には、「恵まれすぎていて社会課題がよくわからない」と発言する子もいます。この考えのままだと課題解決能力は低くなるかもしれません。家庭の経済力の影響による学力格差は社会として支援すべきことはもちろんですが、すべてがマイナスなわけではないことを子どもに伝えたいなと思います。なにがプラスに働くかわからないですから。
余談になりますが、女優の壇ふみさんがインタビューで、「私の父は、子どもの前途が多難であるようにと祈っていた」と、おっしゃっていたので驚きました。お父様は直木賞作家の檀一雄さんですが、「娘達への手紙」というエッセイの中で、そのあとにこう言葉が続いていました。「多難であればあるほど、実りは大きい」。
――前回、働くママであっても負い目を感じる必要はないというお話がありました。漆先生のお父様は品川女子学院の校長、お母様は副校長をされていて、まさに共働き家族ですよね。ご両親から受けた教育で記憶に残っているのはどんなことですか?
漆先生:そうですね。両親は忙しく、夕食の支度も帰ってきた人からやり始めるといった感じで、子どもも家事分担の戦力でした。でも、幼いころの私は、どうしてよその家ではしないでいいお手伝いをうちはやらされるんだろうと、嫌々でした。
しかし、仕事を持つようになって、家事がなんなくできることには本当に助けられました。お手伝いは、子どもの貢献意識を育て、自己肯定感を上げます。そして、それだけでなく、将来の生活スキルとしても生きてきます。今朝も夫のお弁当をつくってきましたが、仕事の合間の料理はむしろリフレッシュする楽しみになっています。
ちなみに私の弟も家事は普通にできます。流しに手が届かないうちから踏み台にのって洗い物をやらされていましたから。下の弟は保育園で給食のメニューのつくり方を習って、お客さんがいらしたときは得意げにふるまったりして(笑)。上の弟は大学で地方に行ったとき、食費の節約に昼ごはんも下宿に戻って調理し、親が心配しないようにカレンダーに毎日のメニューを書いて送ってきてました。
下の弟の妻は外資の通信社に勤務していますが、結婚して家事をやってもらえるので楽になったと言っていました。性別に関係なく、家庭内の仕事を自然に役割分担しているのも、幼い頃から親の後ろ姿を見ていたからだと思います。
家事全般を体験させ自立させておくことがマスト
――共働き夫婦が今後も増えることを考えると、男の子のママも家事を教えたほうがよさそうですね。
漆先生:長い目で見たときに、みなさんのお嬢さんは当たり前のように働く時代になりますし、息子さんは働く奥さんとパートナーシップを組むことになります。そのため、家庭内の仕事ができ、自立して生活できるように育てていかないと、パートナーとの共同生活は難しくなるでしょう。