日本企業は、相手のルールに順応しすぎ?

「ルールは自ら作る」という視点の重要性

これは法律だけでなく、基準やスタンダードなど、いわゆる「ソフトロー」を作るときも同様ですね。そのとき、目的を「今の社会問題を解決するため」というようなことに設定すると、支持されやすい。「税金を多く払わないで済むようにしたい」というような目的では支持を受けられない。だから目的が妥当かどうかがまずは重要です。

また、目的が妥当でも、提案する法律や基準などが本当にその目的を達成するのに役に立つか、合理的なデザインになっているかどうかも、チェックする必要があります。

経済感覚やビジネス感覚から、目下の法律や政策を変えるべきだという動機を持つことも出発点としては大事だけれど、ルールやスタンダードに落とし込むときは、正義、平等、効率性、予測可能性、適正手続き、機会の保障といった価値観を適切に反映しているものを提案していくことが重要です。

日本国内でも、ルールの提案力が重要になる

今まで日本では、官僚が中心になって立法をしてきました。現場の意見が必要なときは、業界団体というものがあり、主要なプレーヤーはみんなそれに入っていたので、業界団体と意見交換しておけば、それでよかった。でも今はその業界団体に外国の企業が入っていないということが問題視もされています。

最近、米国はその点について、日本やEUに厳しく改善を求めてきています。つまり自国の会社だけが業界団体に入っていける構造になっているし、意見が尊重されやすい環境になっていると。ひるがえって、日本企業からみた場合には、新興国にも似たような問題があると感じることもあるのではないでしょうか。

また、経産省に行ってわかったことですが、今は業界団体内でもコンセンサスを得ることが難しくなっているんですよ。各社のコアとなる事業内容や地域が少しずつずれてきているし、外資と手を組み始めたところも多い。これからは各企業のルール提案力がもっと重要になると思います。

合理的なルールになっていて、さらに日本の政策課題の解決に役立つ提案であれば、それは一企業の提案であっても、政府は尊重してくれる時代になるのではないかと思います。さらに、国際的なルールメーキングに寄与していくなら、戦略的法務感覚が絶対に必要でしょう。ところが、日本企業は国際的なルールメーキングもさることながら、日本国内のルールを提案していく経験も足りていないかもしれません。

桑島僕もそう思いますね。日本企業がアウトバウンドしていくときは、その国の政府に働きかけることも大事です。でもそういう感覚は、外に向けてだけ発揮されるわけではない。やはり国内においての制度やルール形成に日本企業が自ら参画していかないと、そういう戦略的法務感覚は磨かれないと思うんですよね。

ホームグラウンドでのトレーニングがないと、グローバルで勝っていくことはできない。これは法務部や顧問弁護士に任せておけばいいという話ではなく、やはり企業のトップが理解しないと、絶対に進まないですよ。

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