「レクサスCT」10年超のロングセラーになった訳 2022年10月の生産終了は何を意味するのか?

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レクサスブランドが日本に上陸してからこれまでの間、レクサスの特徴はハイブリッドにあった。GS450hでトヨタ初のFRハイブリッドを採用したように、セダンでもSUVでもラインナップのほとんどのモデルにハイブリッド仕様が設定されていた。

メルセデス・ベンツやBMW、アウディからなる“ジャーマン3”をはじめ、ライバルとなる欧米のプレミアムブランドで、これほどハイブリッドを充実させていたブランドは、当時なかった。

フラッグシップとして君臨した「LS600h」の2015年発売モデル(写真:トヨタ自動車)

そういう意味で、レクサスのエントリーがハイブリッド専用のCTであったことは、非常にわかりやすい。

レクサスのディーラーを訪れた人が、「もっとも価格の安いモデルがハイブリッドで、ほかのほとんどのモデルにハイブリッドが用意されている」と知れば、「なるほど、レクサスはハイブリッドが得意なブランドなのね」と気づくからだ。

そこにCTの存在意義がある。販売台数は少なくとも、「ハイブリッドのレクサス」を知るきっかけやレクサスの入門車として、必要だったのだ。また、都合11年にも及ぶ長いモデルライフは、数多く売れないからこそ、開発投資の回収や減価償却のためだったとも考えられる。

EV専門ブランドへシフトするレクサス

しかし、今、レクサスは変わろうとしている。2021年12月に実施された「バッテリーEV戦略に関する説明会」において、レクサスはEV専門ブランドになると予告された。今後のレクサスは、トヨタ全体のEV拡販のイメージリーダー的な役割を果たすことになるだろう。

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そうとなれば、ハイブリッド専用のエントリーモデルは必要ない。つまり、CTの役割はなくなるのだ。しかも、デビューから10年が経っており、“引き際を見極める”という意味でも悪くない。そして、最後の限定仕様車Cherished Touringは、長年頑張ったCTとそれを支えたファンに対する感謝といえるだろう。

CTがなくなれば、その後を継ぐEVのエントリーモデルが登場するはずだ。EV専業となるレクサスブランドを象徴するエントリーモデルは、どのような姿なのか。ロングセラーの生産終了は寂しいが、新たなモデルの登場を楽しみに待ちたい。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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