アラサーのための戦略的「人生相談」--どうしたら「豊かさ」を実感できますか(その1)

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 この能力は、感性の弱い人には持てないでしょう。そういう点でも、立派な「能力」だと思います。これらのことは、おおむね「身体感覚」と考えていいでしょう。

自分にとって、最もリアリティのあるものは、最終的には自分の体でしょう。「痛い」「寒い/熱い」「苦しい」という身体感覚ほどのリアリティはありません。したがって、身体感覚の感性を磨くことが重要になります。
 
 現在、大人のランニングがブームになっています。たとえば、ホノルル・マラソンにチャレンジした人のほとんどが、走破後の「達成感」を最大の魅力だとしています。大いに理解できますね。

一般に「豊かな人生を送る」ことを問題にした場合、おそらく「趣味を持つべし」というのがいちばん多い回答でしょうね。これは私も、大いにおススメします。

私は、年末に雑誌の年間ランキング入りしたミステリーをまとめ読みします(2010年度の海外部門1位の『愛おしい骨』は、読むのがしんどかった!)。ジェフリー・アーチャーの作品、ジェフリー・ディーヴァーのライムもの、 ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズ、ディック・フランシスの競馬シリーズ、ブライアン・フリーマントルのチャーリー・マフィン・シリーズはすべて読んでいるので、新作が出ると書店で即、購入します。

家でチャーリー・パーカーかマイルス・デイビスでも聞きながら読み始めるときの充実感。こうして書いているだけでも、たまりません(ミステリーは、ジャズ、それも昔のクールジャズが最も相性がいいようで。一番のおススメは、マイルスの映画音楽「死刑台のエレベーター」です)。これらの趣味も、やはり感性が必要である以上、1つの能力だと考えていいでしょう。言うまでもなく、感性は磨くことが必要です。

さて、ここまで「豊かさ」を実感できる事柄についてお答えしてきました。一般的にはこれで十分だ、とも言えましょう。しかし、冒頭で述べたように、あなたが平均よりも能力が高いようなので、もう少し高次元の豊かさについてお話しましょう。

ここまで述べた、「清貧の能力」にせよ、「趣味を持つ」にせよ、しょせんは、個人的な「豊かさ」にすぎません。しかし、個人的な「豊かさ」で完結して、あなたは十分に満足しますか? 次回は、ちょっと本質的な「欲」と「満足感」との関係について考えてみましょう。



ひろせ・いちろう
 1955年生まれ。東京大学法学部卒業。80年、電通入社。トヨタカップを含め、サッカーを中心としたスポーツ・イベントのプロデュースを多数手掛ける。2000年に電通を退社し、スポーツ・ナビゲーションを設立。その後、独立行政法人経済産業研究所の上席研究員を経て、04年にスポーツ総合研究所を設立し、所長就任。江戸川大学社会学部教授を経て、多摩大学の教授として「スポーツビジネス」「スポーツマンシップ」を担当。著書に『Jリーグのマネジメント』『スポーツマンシップ立国論』など。現在東京と大阪でスポーツマネジメントスクールを主宰し、若手スポーツビジネスマンを育成している。
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