「1バレル100ドル時代が到来するかもしれない」という柴田明夫氏が、昨今のエネルギー事情を読み解くための3冊を紹介。
ウクライナ侵攻は、原油をはじめとするエネルギーの安全保障にも大きく関わる。侵攻を契機にWTI原油先物価格は瞬間的に1バレル=130ドルまで上昇、その後も高値警戒感は継続している。
しかしエネルギー高騰の懸念は今に始まった話ではない。2015年のパリの「国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)」で採択された「パリ協定」以降は原油・化石燃料関連企業からの投資撤退、ESG企業への投資が加速し、脱炭素が世界的に本格化した。
一方、国際エネルギー機関(IEA)が21年5月に発表した「Net Zero by 2050」では、現在使用している天然ガスの50%、石油の25%は残り、OPECなど在来型の石油資源を持つ国のウェートも高まるという。石油需要は将来的に減少するが、それ以前に原油の生産量が減り、需給が逼迫する流れの中で、原油価格は長期的に上がる傾向にある。ウクライナ侵攻はこの流れにダメ押しする格好だ。
加えて、18年に中国・上海で人民元建て原油先物取引が始まるなど、原油取引をドル建てで行うペトロダラー体制に挑戦する動きも見られる。中国はインドとともにロシアへの経済制裁に消極的であり、今後はユーラシア大陸での影響力を背景に中国のパワーがさらに増していく可能性がある。原油はマーケットで取引されるよりも戦略物資として国家間で取引されるようになる。価格は高止まりとなり、1バレル=100ドル時代が到来するかもしれない。
パイプラインの真実
こうした流れの中で読んでおきたいのは『新しい世界の資源地図』だ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら