斎藤幸平准教授が、世界の危機を知るための本を紹介。
世界は、ウクライナ危機一色だ。開戦以前、世界は気候変動対策に取り組もうとしていたが、今や忘れ去られたかのようだ。だがそれではいけない。今こそ大胆な変革が必要である。
コロナ禍は、「最後の危機でも最悪の危機でもなく、今後も続く慢性的な緊急事態の最終リハーサルだ」と警告してきた。それが、人類の経済活動が惑星のあり方を根本から変えてしまった「人新世」という時代の宿命だからである。
パンデミック下で世界の分断は深まった。米中対立の影響が広がり、経済格差も拡大した。そんな中、NATO対ロシアという形の危機が起こったのだ。西側諸国はロシアを共通の敵とし団結しているが、他方で中国やインド、ブラジルなどの国々はそれを冷ややかな目で見ている。
そのような分断は気候危機にとっても致命的である。気候変動対策は本来、極めて限られた短期間に、世界が団結して大きなアクションを起こさなければいけない問題だからである。
気候危機が進めば、破壊的な自然災害も増え、食糧危機や水不足も生じる。さらには気候難民も大量発生する。それは、間違いなく新たな紛争の火種になる。
プーチン大統領は、エネルギー輸出で外貨を稼ぎ、国民生活を豊かにすることで支持を拡大してきた。そのツケを払うことになるのは、気候変動で最も苦しむアフリカや中東の人たちである。さらにロシアは、輸出などによって蓄えた富で兵器を買い、ウクライナ市民を殺している。これが化石燃料を大量消費して栄えた世界の矛盾だ。戦争も気候危機も問題は同根の化石燃料であり、犠牲になるのは弱い人々である。
大きな政府の下での転換
弱者の犠牲は西側諸国でも生じている。新自由主義が格差を広げてきたし、市場任せの経済成長路線が、脱炭素化への対策を遅らせ、将来世代に大きな環境負債を残す結果となっている。
だが、新自由主義はパンデミック下で終わりを告げた。あれほどの危機を前に「自己責任論」は通用しないからだ。
資本主義への批判は高まっている。危機への対応には、財政出動や市場介入など、「大きな政府」が必要になる。今後も、大きな政府の下で、生活保障や脱炭素化が求められるだろう。それが、ダボス会議がいうように、資本主義の「グレートリセット」になるかが、未来の分岐点である。
そこで、気候変動と格差という2つの危機に私たちが直面している今、読むべき5冊を紹介したい。
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