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危機をまったく別の風景にする「哲学的な視点」 多様な見方や観点への準備が求められている

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「ほかの見方がいつでも可能なことを、たえず心がけておきたい」という岡本名誉教授。危機を生き抜くための視点を養う5冊を紹介する。

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今日の危機はどこにある? コロナパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻が起こって、にわかに危機が叫ばれている。しかし、はたして今、どんな意味で「危機」なのだろうか。

新型コロナウイルス感染症が発生したとき、欧米の国家はいち早く非常事態宣言を発令し、ロックダウン政策を採用した。これに対して、現代イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンは、一貫して批判を展開している。

彼によると、国家は死への恐怖心をあおりながら、専制的な強権主義を採用し、国民の自由を奪ったわけである。しかも、これに加担したのが、テレビや新聞といった大手メディアである。

この批判のために、アガンベンはメディアから排除された。その主張は「陰謀論」と見なされ、非難されることになる。しかし、アガンベンが次のように語るとき、私たちは無視できるのだろうか。

「実際に私たちが見ているのは諸権利や議会や権力分立に基礎づけられた市民的な民主主義国家という世界の終わりであって、その世界が座を譲りつつある新たな専制は、管理の浸透性という点で、またあらゆる政治的活動の廃絶という点で、これまでに知られているいかなる全体主義よりも悪いものになろう」(『私たちはどこにいるのか?』

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