日本の技術ベンチャーが面白くなってきた インテル投資責任者が語る有望分野
特に映像体験にフォーカスしたとき、ノートパソコンや新しいスタイルのデバイスの、デザインの自由度も高まることになるだろう。しかしそのときに問題になるのがストレージ、すなわちデータを貯めておく技術だ。豊かな映像体験は大容量であることが常で、これをいかに持ち歩けるかが課題となる。
カッパム氏は、「人々はより大きなデータストレージを持つことになる」という予測を語る。ラップトップ、タブレット、スマートフォンのそれぞれが巨大ストレージを持つ世界が訪れると話し、小さくて大容量を実現する技術にも興味を持っているという。
「日本のスタートアップの質は高まった」。カッパム氏は、インテルキャピタルが注目しているその他のエリアとして、ドローン(無人飛行機)やロボット、自動運転などの分野を挙げた。これらの技術で注目している国こそ、日本だという。
インテルキャピタルは2014年、自動運転技術のパッケージ化に取り組む先進企業、株式会社ZMPに対して出資を行っている。ここ数年、日本のスタートアップ企業の競争力が変わってきたと指摘する。その変化とはどんなものなのだろうか。
ZMP投資も担当したインテルキャピタルのマネージングディレクター、出川章理氏に詳しく聞いた。「例えば10年前の日本のスタートアップ企業は、ケータイやスマートフォン向けアプリ、ソーシャルメディア系などが多かったことが挙げられます。正直なところ、インテルとしての投資対象としては、魅力的ではありませんでした。しかしここ数年で、明らかな変化が見られるようになりました。基礎技術に基づいたスタートアップが増えたことで、『骨太』の企業が増え続けています」(出川氏)。
有能な技術系学生がベンチャーへ
その原因について出川氏は、日本のテクノロジー系大企業の不振、競争力低下が背景にあるとみている。「技術系の学部を卒業する学生は、その多くが大手企業に入る道を選択してきました。しかし昨今はそうした企業の魅力がなくなり、日本の企業に就職したくない、という学生も増えてきました。そこで起業するパターンが出てきたのです。大学発、研究所初のスタートアップは、大学や教授、研究機関と連携しながら、その技術をビジネス化しようとします。そのため、確固たる技術を持ったスタートアップが増え、投資環境としての魅力を増しています」(出川氏)。
今後2~3年後がさらに楽しみだと語る出川氏。日本の魅力を高める分野としては、工業デザインとバッテリー技術だという。様々なデバイスや基礎技術も、デザインとバッテリーの自由度が高まらなければ普及は難しい。「そこに日本の可能性がある」と指摘した。
日本の家電業界は依然厳しい状況に立たされているが、それを原因として人の動きが変わり、魅力的なスタートアップが増えているという現状は面白い。あるいは、日本の大企業が国内の面白いスタートアップをより生かす構造が生じることは、再生の大きなヒントと言えるかもしれない。
翻って学生にとっては、技術を生かしたスタートアップという道が現実的になり、あるいは魅力的なキャリアパスになってきたことも、選択肢が広がる結果をもたらすことになるだろう。
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